26 触れる


触れ合うだけ、なんてものは最初からなかった。
触れたと思ったら舌が入り込んできて俺の舌に絡みつく。
咥内に広がる煙草の匂い。
手を伸ばし夾の首筋に触れ髪を掴む。
舌を甘噛みして今度は俺が夾の咥内に入りこんで歯列をなぞる。
そしたら無理やりというようにまた舌が絡んできて。
一歩も引かず互いの咥内を貪るように行き来する。
いままでしてきたキスの中で一番激しい。
荒々しくて、奏くんも男だったけど、だけど本当に夾とのキスは女性相手とは全然違うって実感させられる。
息をする暇がないくらいに舌を交わらせる。
擦れ合う舌のざらつきが、粘膜をくすぐる舌先が気持ちよくてたまらない。
軋む音がして重みがのしかかる。キスしたまま狭いベッドに夾に押し倒される。
―――これは、と、薄く目を上げると、目があった。ふ、と夾の目が細くなって合わさった唇から笑ってる、というのが伝わってくる。
止まらないキス、その合間に夾の指が俺のシャツのボタンを外しはじめたから俺も同じように外して行く。先手取られてるなぁって思ったから膝立てて夾の脚の間へと押し当てる。少しだけ反応しかけていた夾のを膝でぐりぐりすれば硬さが増す。
同時に夾の手が素肌に触れてきて胸を弄ってきた。
じわじわ沸く刺激に息が上がる。
気持ちよさに一層キスは深くなっていく。角度を何度も変えてどれくらいキスを続けたのかわからないくらい。
だんだんといい加減前が窮屈になってきて、俺は夾の髪を掴むと軽く引っ張った。
唇が離れ銀糸が引いて、切れる。
夾の濡れた唇が艶めかしい。切れ長の目が同じように欲情に濡れてるのも雄臭くてエロイ。
―――これは、どっちなんだろう。
と、できればっていうか俺としては、な意味を込めて夾の髪から首筋へと手を移動させ力を込める。
そして予想よりもあっさりと視界は反転。
いままで上に夾を見ていたけどいまは下。
ベッドが大きく軋んで、俺は夾の身体を跨いだ。

「肝心なこと訊き忘れてたんだけど、どっち?」

夾のズボンのベルトを外しながら笑いかけると、薄く笑い返された。

「お前が下なんのかよ」
「んーん」
「ならそれでいいんじゃねぇの」
「いいの?」

これまたあっさりと返されて、思わず訊き返したら呆れた目をされた。

「お前最初から突っ込む気満々だろ。つーか、ここまできて俺が上がいいっつったら終わるのか」

確かに。
あの休憩所で夾に見られていた時も頑張って腰振りアピールしてたし?
いまお互いもうガッチガチの状態で打ち切りなんて、もとより俺がここで引くことはないんだけど。
とりあえずまぁ話しあい必要だったらと聞いてみたわけだけど。

「まさか」

と、終わるわけないと返しながら夾の半身を取り出す。
薄うす感じてたけど、

「結構大きいね」

予想通りっていうか。勃ちあがった夾のはご立派で、血管を浮き上がらせて脈打っている。

「お前も脱げ」
「あ、俺先に言っておくけど普通よりは大きいよ? ちょっと負けてるかもしれないけど、長さは俺のほうが……。あと、硬度には自信が」

夾のに触れながら言ってみれば俺の腕が掴まれて、夾が身体を起こした。
唇に噛みつかれ、俺の半身をズボン越しに掴まれる。

「言い訳はいいから早く脱げ」
「いや、言い訳じゃなくて事実」

言い合いながら、そんなこんなで俺たちは狭いベッドの上で服を脱ぎ捨てた。

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