14 屋上U


俺の顔見て舌打ちするなんて俺ってば相当意識されちゃってるなぁ。
パンを頬張ってゴミやコーヒー牛乳を持ち夾のそばへと行く。
じろり、と睨まれたけど気にせず夾の傍らへと腰を下ろした。

「藤代はもう飯食べたの?」

見上げて訊くけど夾はぷかぷか煙草を吸いながら俺のことなんて眼中にないように空を見ている。

「パンわけてあげようか?」

俺的にとっておきのスマイルを向けるけどこっち見ないヤツに意味ねーし。
ま、いきなりフランクになられてもびびるしいいんだけどな。
いまは腹減ってないってことでいいだろう。
そう結論を出して、残りのパンを食い終わる。
コーヒー牛乳をストローでずーっと飲んでいたら視界の中で煙草が落ちていく。
すぐに靴でもみ消され、拾い上げる夾の手。
一応吸殻はちゃんと回収するのえらいえらい。
最後まで俺は視界に入れてもらえないのか夾は俺を見ることなく、屋上のドアへと向かいだした。

「―――藤代」

ブレザーのポケットに入れていたものを取り出し、振り返った夾へと投げる。
ナイスキャッチで受け取った夾はそれを見て眉を寄せてようやくちゃんと俺を見た。
夾の手の中にあるのは煙草だ。
この前もらった代りに買っておいた新しい一箱。
夾は煙草と俺を見比べ、呆れたように目を眇めると煙草をポケットにしまい背を向けた。

「またなー」

あっというまにドアの向こうへと消えていく後ろ姿にひらひらと手を振る。
もちろん返事なんてあるはずなく、ひとりになった屋上でコーヒー牛乳を飲み終えると肌寒さに堪えながら日向ぼっこをしつつ、ちょっと昼寝した。



それから―――俺は昼休みをその屋上で過ごすことが多くなった。
そして、

「な、このスペシャル焼きそばパン食べたことある?」

相変わらず無言のまま、相変わらず眼中には入ってないみたいだけど、夾もまた一服しにくる。
俺の言葉に返事はないけど、問題はない。
別に返事が欲しいわけでもないから。
俺と夾に会話が成立したのなんて初めて会ったときくらいだとしても。
別に会話が成立する必要があるわけでもないから。
肝心なのは、この空間を共有しているっていう事実だ。
一服を追えて去っていく姿を眺めながら、昼寝をするには寒さが厳しくなってきたなーと欠伸を噛み殺した。

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