11 紫煙U
「それで? ハマったわけか?」
「さぁ、どうかな。よくはあったけど本当に可愛い子だから」
正直女性とするのと大差なかった。
俺と同じ男の象徴はついてはいたけど、喘ぎも女の子みたいだからなぁ奏くん。
「つまらなかった?」
「そこまでは言わないですよ」
「で、この煙草か?」
「さー、どうかな?」
本当にこの人はなんなんだろう。
たった煙草一つでなんでまるですべてわかったかのように言ってくるんだろ。
「―――智紀」
窓際からまた俺のもとへと紘一さんが歩いてくる。
深く吸い込んで吐かれた紫煙が至近距離で吹きかかる。
髪に匂いつきそうだな―――なんて考えていると長い指が煙草を持ち直し、俺の口元へと吸い口を持ってきた。
俺を見下ろす男を見上げながら、唇を開け、差し出された煙草を咥えた。
離れていく指先を眺め夾の煙草を吸う。
咳き込まないくらいには吸えはする。だけど頻繁にってわけでも好んでるってわけでもない。
成長期だし身体に悪いことはしたくないし?
「どんな味だ?」
目を眇める紘一さんに首を傾げてみせる。
「苦いですね」
マズイなーと内心ぼやきつつ言えば、可笑しそうに喉を鳴らし紘一さんは背を向けた。
そのまま窓際へと戻ると開ける。
冷たい風が入り込み煙くなりかけてた室内の空気を少し追い出していく。
湯上りに冬の夜風は厳しいな。
そうは思っても動くきもせずにぷかぷか煙草を吸い、紘一さんはスーツの内ポケットから自分の煙草を取り出すと火をつけていた。
違う匂いの紫煙が漂う。
「―――あ」
そういえば、とふと思い出して俺もベッドから立ち上がった。
「紘一さん」
「なんだ」
「携帯灰皿、持ってます? 灰皿って持ってないんですよね」
紘一さんは煙草を咥えたまま携帯灰皿を取りだした。
小さな正方形で黒のクロコダイル革の灰皿。それをあけて俺に差し出す。
投げてくれればいいのに。
向こうまで行くのが面倒くさいんですけど。
仕方なく腰を上げ、俺も窓際へと向かった。
紘一さんの手の中の携帯灰皿に煙草を押し付ける。
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