09 双子。


「紘一くん来てるんだ?」

とっくに家族の夕食の時間は終わってて、俺一人遅い夕食をとっていたら向いに座ってる弟の千啓(チアキ)がお土産のケーキを食べながら言った。

「そうだよ。だからこのケーキがあるんでしょ」

そう返したのは妹の干和(ヒヨリ)。
ふたりとも中学二年生で、いわゆる双子だ。
とはいっても二卵性双生児だし瓜二つってわけじゃないがわりと似ているかな。
性格は真逆だけど。
のんびりマイペースな千啓と男勝りな干和。

「勉強おしえてほしーな。今日出た宿題難しかった」
「紘一くんはお仕事の話で来てるんだからだめ!」
「じゃあ智くんでいいや」
「智くんは予習復習したり宿題あるからだめ!」
「じゃあ干和ちゃんでいいや」
「しょうがないわねー」
「……」

この双子は仲良いのかなんなのか。
いつもこんな感じの会話をしてて、妙に笑えるんだよな。

「勉強頑張れよ。わからないところあったら聞きにきていいから」
「はーい」
「智くん、ちぃちゃんのことは私に任せておいて!」
「はいはい」

紛れもなく仲がいいんだろうな。
……干和が千啓をかなり年下の弟のように扱ってはいるけど。
本人たちがいいならいいだろ。

「―――ごちそうさまでした。お兄ちゃんはお部屋で勉強してるなー」
「「はーい」」

宿題の話をしていたわりにのんびりとお菓子を食べ続けている双子を残して、茶碗を片付けると部屋に戻る。
双子に言ったそのまま参考書を取り出して風呂にはいるまで勉強することにした。
そうして俺の部屋のドアがノックされたのは風呂からあがってしばらくしたときだった。

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