第5話。そして平凡くんの非凡な才能が花開く?


なんだ会長も俺と大差ないな。
いや会長のほうが俺なんかよりもともとの質が高いから比べられないけど。
でもヤリまくってるイメージだった会長がわりとアッチは普通だったっていうのは童貞の俺にはほっとする事実だった。

「会長、以外に可愛いんですね」

ついニヤニヤしてしまったら、カッと会長が目を見開いて腕を振り上げた。

「テメェっ!!」
「ちょ、タンマ!! アンタの握り潰しちゃうって!!」

反動で。
そう言えば慌てて動きを止めようとした会長がバランスを崩して俺の方へと倒れ込んできた。
俺まで慌ててというよりも、ぶつかられてバランス崩して会長と一緒に倒れ込む。
そして、事件は起きたのだ。

「……」
「……」

俺と会長は間近で見つめ合った。
ほんっとうに至近距離で。
その距離は10センチない。
そのうえに、俺の口に乾いた感触と少しの温もり。
会長が驚いたように目を見開いて、俺も――人生二度目の貴重なキスに目を見開いた。
そう、俺と会長は倒れたはずみでキスをしちゃう、なんていうベタなラブコメのような展開に陥ったのだ。
キス。
ファーストキスじゃないけど、キス。
しかも男と!
うげぇえええ! 離れないと!
コンマ何秒かで考えて会長を離そうと腕を掴んだ瞬間、会長も俺と同じように凹んだような目をした。
それを見たら、なんだろう。
平凡な俺が会長にひと泡吹かせた気分になったっていうか。
そりゃ今の状況は偶然の産物だけどだ。
男のキスなんてノーカンだし、こうなったらあとちょっとくらい会長の面白い顔を見てみたい。
そんな思いが過って、魔が差した。
童貞なのに、童貞のクセに。
相手男だし、いっか!と、俺は会長の口の中に舌を差し込んでいた。
驚きで半開きになっていたのかあっさりと舌は会長の咥内に侵入できて、生温い粘膜を刺激するように経験値ゼロ、童貞の開き直り、ちんこ黒いけど下手くそじゃん、と思われようとかまわない!、って感じで舌を動かした。
よくわかんなかったから、適当に、動かした。
咥内全部舌這いまわせればいいのかな?
初めてすぎてわかんねぇけど、まぁいいよなー。
てっきり殴り倒されるかと思ってたのに、俺が舌を差し込んだときに「っ、ん!」と呻いたのを最後に会長の反応はない。
いや途中まで身体を捩ってたんだけど、段々――。

「っ……ン、ぅっ、ん」

なんか変に甘ったる声が聞こえてくるような気がするし、俺の上に乗った身体がびくびくしているような気がするし、それに――普通ちんこが反応しているような気がする。
え、なに……まさか会長感じてる!?
びっくりして俺は会長の顔を見ようと、会長を離すべく会長の舌を軽く噛んだ。

「ンッ、ぁ」

途端にまた妙に甘ったるく呻く会長。
大丈夫か、このひと?
心配になりながら離れた会長の顔を覗き込めば真っ赤になっていた。
ちんこ掴んだときよりも真っ赤だ。
目は潤みまくってるし、息は荒くて熱っぽい。
本当に大丈夫か? このひと。

「……会長。こんなので感じたんですか」

童貞のセカンドキス。しかもディープなんて初めてな、キスで。
つい可笑しくて笑ってしまうと、会長はさらに赤くなった。
首や耳まで全部。
ぐ、と言葉につまったようにして会長が立ち上がる。
すぐに少し前かがみになって。
そして、

「……っ、お前……みたいな百戦錬磨に俺の気持ちなんてわかるかー!!! クソボケヤリチンめー!!!」

と、小さな子供みたいに叫ぶと部屋を走り去ってしまったのだった。


***

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