第2話。俺は風紀委員長木藤昇。風紀委員長である俺は日頃常(略)


「おい、平凡。お前身の程ってものを知らないの?」

制裁における定型句を生徒会会計親衛隊隊長・樋宮ひいろは仁王立ちで三牧へと言った。
樋宮らが三牧を連れてきたのはまったく人気のない別棟の空き教室。
俺はドアを数ミリ開け、隙間から中の様子を見ていた。
三牧は樋宮の手下3人に囲まれ跪かされ、正面に樋宮が立っている。
仁王立ちで眼光鋭く、な樋宮だが、身長は160センチに届かない華奢な身体をしていて、少女のような美少年だ。
そんな樋宮が威圧感を出そうとしたところで出てくるのはせいぜい女王様感と言ったところで、まった恐ろしくはない。
手下3人は金色の長髪に金色の短髪に金色の坊主頭に、と金色トリオで、身長も似たり寄ったりだ。
確か名前は白川、白井、白谷だったはず。しっかりとやつらの顔を脳に刻み込む。

「……知ってます」

ぼそり、と平凡イコール自分のことと認識しているらしい三牧が呟いた。

「知ってるならなんで離れないのさ! 僕、もう何度も警告したよね? 生徒会室に行くな、叶野様に近づくな、生徒会の皆様に近づくな、喋るな息吸うなって」

息を吸わなかったら死んでしまう。こいつはなにを言っているのだろう。
変声期はとうに過ぎているだろうに高い声でキャンキャンと樋宮が吠える。
それにしても何度も警告した―――ということは制裁はこれが初めてということではないわけだ。
風紀の監視をもっと強化せねばならないな。
この場を治めたあとで緊急会議をするか。

「……すみません」

校内の巡回ルートももう一度見直したほうがいいかもしれないな、と考えを巡らせていると顔を青ざめさせた三牧が俯く。

「すみませんじゃないよ、平凡!!!! 藤川のバカには手を出せなくてイライラしてるっていうのに、お前みたいな平凡までウロウロウロウロ」

藤川には手を出せない―――か。
なるほど、最近微妙に制裁が減ったのは藤川信者が藤川に手を出さないようにとでも牽制しているのかもしれないな。
だが抑えつけたところでいつしか鬱憤は以前以上に大きく爆発してしまう可能性の方が高い。
そうなったとき―――被害は大きくなるのじゃないのか。
眉間に皺が寄る。拳を握りしめ、早急に対処を考えなければと痛感した。

「何回言ってもわかんないみたいだし? 平凡、今日は痛い目見せてあげるよ。もう学校に来たくないってくらいね」

樋宮が性悪な笑みを口元に浮かべ、「やって」と3人の男たちに合図をした。
リンチか、と緊張が走る。助けに入らねば、と身構える俺の視界の中で男たちは三牧を床に押し倒した。

「お前みたいな平凡相手に勃つかわからないけど」
「精々楽しませてもらうぜ」
「たっぷり写真撮ってやるからな」

これは性暴力!

「やめろっ」
「はいはい、殴られたくなかったら黙ってろよ?」

金色の長髪白川と金髪の坊主白谷が三牧の腕を押さえ、金色短髪の白井が三牧のズボンへと手を伸ばした。
三牧の顔は蒼白になっていて恐怖に震えている。もがいているが3人に押さえこまれ逃げ出せない。
俺はドアをグッと握りしめ、突入の体勢を取る。
金色短髪の白井が三牧のズボンを下ろしたところで突入し、現行犯として確保だ。
樋宮はもとよりあいつら3人蹴りだけでいける。
カチャカチャとベルトを緩める音が響く。
俺は静かにドアを開けていき。

「やめろっ、やめろって!!」
「うっせえ! お前みたいな平凡どうせ童貞の上処女だろ? 俺たちが可愛がってやるからありがたく思え」
「平凡の粗チン開帳〜!」

ぶちっと俺の中の堪忍袋の緒が切れる。
突入だ、と、三牧のズボンが引きずり降ろされると同時に俺は足を踏み出しかけた。
瞬間、

「……え」

と、素っ頓狂な声を上げたのはズボンを引き下ろした白井だった。

「どうしたんだ……、って、え!??」
「なんだよ……、っええええ?!!!」
「お前たちどうしたの、さっさとヤって……え!??? デカっ」

動きを止めた3人に顔をしかめた樋宮が近づき目を見開いた。
なにが起こったんだ!?
沈黙が落ちたやつらの視線は1か所に集まっていて、俺はそれを眼で追う。
そして―――俺は驚愕に顎が外れそうなほど口を開いた。
そこにあったもの。

それは萎えているにも関わらず禍々しいほどに巨大で黒々とした男根だったのだ。

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