2時間目
第1話兼プロローグな第1話。俺の名前は木藤昇。曲ったことが大嫌いな高校2年(略)


俺の名前は木藤昇(キドウノボル)。
私立王洞学園に在籍する二年で、風紀委員委員長というものをやっている。
この学園は全寮制で男しかいないせいか性の対象まで同性なやつらが多く、生徒会メンバーは人気投票で決められている。
しかも生徒会メンバーには親衛隊なるものまであり、生徒会に近づく生徒たちがいれば親衛隊から制裁を加えられるなどという悪習がある。
制裁はもちろん素行の悪い生徒による暴行事件なども多少あり、日々風紀委員は学校内を見回り風紀を守っていた。
それで、だ。

「……あれは三牧すぐる。そしてまわりにいるのは……」

あまり使われることのない別棟の校舎に三牧すぐると他の生徒数名が歩いていくのをみたのは放課後だ。
三牧すぐるというのは平凡を絵にかいたような生徒だ。
害もなにもない生徒。
だが彼はいまかなり危険な立場に立たされていた。
というのも先日やってきたぼさぼさ爆発頭に瓶底眼鏡というなかなか見られない奇抜なファッションの転校生がまったくもって空気が読めないやつだった。
転校生こと藤川ゆきさは出会った者みな友達という持論をもっているらしい。そして声がでかく、力が強い。
それだけならよかったのだがどうしてか学園でも親衛隊持ちのやつらに好意を寄せられるという予想だにしなかった展開となったのだ。
親衛隊からの制裁はもちろん行われたが藤川は馬鹿力でもって返り打ちにした。
もちろん制裁は風紀が関与する案件であり、藤川が制裁を跳ね返したさいに起こった器物破損も、制裁を上回る過剰防衛も風紀が取り扱う案件だ。
なおかつ藤川信者は生徒会メンバーにも及び、まともに生徒会の活動をしているのは庶務だけだという信じがたいことになっている。

いや最近生徒会長の柏木は職務に戻っているようだな。
それはいいとして柏木が戻るまでは生徒会の仕事は滞り、その影響はもちろん風紀にも及ぶわけであり。
要約するのならば藤川が転校してきたことにより風紀の仕事はさらに多忙を極めている、ということだ。
そして多大な被害を被っているのは我ら風紀だけではない、件の―――いま俺が後をつけている生徒たちの中にいる三牧すぐる、彼もまた、である。
というのも彼は藤川のルームメイトとなってしまい、そのせいで藤川から親友という称号を受けてしまったのだ。
藤川は三牧を連れ生徒会室に遊びに行き、それは三牧もまた制裁対象となってしまうということだった。
三牧が不本意だといことは一目でわかった。彼は巻き込まれただけなのだ。
もちろん制裁が行われないように風紀の方でも密かに保護対象としていたのだが。
風紀の目をかいくぐって、三牧はいまおそらく制裁のために連行されていた。
先導するのは生徒会会計の親衛隊隊長。三牧を囲むようにしている三人は親衛隊には属していない素行の悪いF組の者たちだった。
もちろん風紀委員長である俺が見逃すはずもない。

だが―――いまここで制止しても罰することはできない。
三牧に怪我など負わせる気はないが、できれば現行犯でやつらを取り押さえたい。
腕に覚えありの俺ならばあの4人など片手で充分。
決してすまーとふぉんを使いこなせていないため風紀のメンバーに連絡が取れないというわけではないのだ。
俺ひとりで事足りる。
奴らに気取られないよう、俺はそっと気配を消し後を追ったのだった。

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