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「……ッイ……っ」

傍らでベッドのスプリングが軋み、小さなうめき声が聞こえてきた。
やりまくって気を失うくらいの勢いで眠りに落ちてどれくらいたったんだろう。
ぼんやり重いまぶたを持ち上げる。
部屋の中には太陽の光が差し込んでいて薄目でも眩しく感じた。
全身ダルイ眠い、な状態のまま視線だけを動かせば額に手を当てて顔をしかめている優斗の姿。
もう片方の手は腰にあてられていた。

「――だいじょーぶ、優斗くん」

まだ眠気がさめきらないまま欠伸混じりに声をかけながら腰を撫でた。
びくり、と傍目にもわかるほどに身体を震わせて優斗は俺を見る。
一瞬硬直したように動きを止めたけれど、すぐに深いため息を吐きだし髪をかきあげた。

「頭が痛い、喉が痛い、腰が痛い」
「飲みすぎ、喘ぎすぎ、ヤリすぎ」

うんざりしたような声に事実をそのまま返せば、また深いため息をついた。
そして勢いよくベッドに倒れ込む。

「……智紀、あのひとと知り合いだったのか?」

寝がえりを打って俺の方を向く優斗に俺も同じように身体の向きを変える。

「まーね」
「……智紀と同じ系統?」
「……同じ系統ってなんだよ」

思わず吹き出してしまう。
まぁ似たり寄ったりかもしれないけど――だ。

「俺は無許可に催淫剤なんて使わないから」

笑顔を向ければ優斗は眉間にしわを寄せ、またまたため息。

「まさか催淫剤のまされるなんて思ってもみなかっただろうけど、でもそれなりにアプローチはされてたんじゃないのか?」

いくら甲斐崎さんでもノンケ相手に突然誘って催淫剤、なんてことはしないはずだ。
きっとアプローチはしていて、

「……それっぽい雰囲気は感じてたからずっとかわしてはいた……」

優斗の鉄壁の防御に最終手段だったんだろーな。

「よっぽど気にいられてたんだなー」

からかうように笑って優斗の頬を抓る。
少しムッとしたようにしながらもつかれてるのか俺の手を払うこともせずにされるがまま。

「もうちょっと寝てれば?」

よく見ればクマもできてるし。
あれだけヤって疲労も激しいだろうからな。
俺もまだ眠いし。

「チェックアウトは? それに甲斐崎さんは……」
「甲斐崎さんのことは心配しなくていーよ。今度あの人好みの相手紹介することになってるし。それに多分この部屋連泊で取ってるはず。催淫剤の効果わかってるはずだし、きっと時間かけてゆっくり」
「もういい」

俺の言葉を遮り、優斗は顔をそむけ枕に伏せる。
まぁ食われそうになった話しなんて聴きたくないよな。

「ごめんねー、優斗くん。俺だけ棚ぼたもらっちゃって」

剥きだしの肌を撫でると、僅かに身体を震わせ少しだけ視線を向けた。
ほぼ枕に顔を伏せてるから表情はよくわからないけど、その目は不思議そうな色をしているようにも見える。

「なにが」

目と同じように声も不思議そうだ。
てっきり俺は起きたら怒られるかなとも思っていたんだけどな。

「媚薬入り優斗くんを美味しく頂いちゃったからさ」

だけどでも本当に、甲斐崎さんの手に落ちなくてよかった。
あんな乱れた優斗もったいなくてもったいなくて、見せられない。
ほっとする気持ちと同時にやっぱりどうしても昨夜の優斗の乱れようが脳裏に浮かぶと――ニヤニヤしてしまう。
と、優斗がじっと俺を見つめてることに気づく。
ニヤニヤをどうにか真面目に見えるよう爽やかさを心がけ笑顔を作ってみた。

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