「……つい、ってなんだよ、ついって」

呆れたため息つきながら優斗の背に手を当てた。
途端、びくりとその身体が震えて、内心またため息。

「優斗、歩けるか? とりあえず中入って」

小さく頷く優斗を確認して部屋の中に。
広々としたデラックスタイプの部屋の正面の窓からは夜景が見えてこんな状況じゃなきゃルームサービスでも頼んでゆっくり過ごすのになー……なんて考えつつ優斗を一人掛けのソファに座らせた。

「水持ってくるから」

冷蔵庫へと向かいミネラルウォーターを取り出しグラスにそそぎすぐに戻ろうとしたら優斗がソファではなく窓辺に立ってる。

「優斗? ほら」

窓ガラスに額を押し付けるようにして俯いている優斗の口からは辛そうな吐息がこぼれていた。
グラスを差し出すと手が伸びて一気に飲み干すとまた窓に額をつけている。

「大丈夫か?」

空になったグラスを受け取ってテーブルに置いていたら、

「……知り合い……」

って小さな声が聞こえてきた。
抑揚ない声。本来なら疑問形なんだろうという感じだったから頷いた。

「そう。昔仕事で知り合ってね」

まだ今の会社を立ち上げる前のころだ。
晄人の兄の知り合いでもある甲斐崎さん。

「……」
「優斗も仕事絡みだろ? 今日のことは気にしないでいいよ。もともとあの人が悪いんだし、それに結構あっさりしてるからプライベートを仕事には持ち込まない」

まー仕事の延長線上でこういう風に連れ込んでる時点でごっちゃにしていると言われたらそうなんだけど。

「だから」

それより薬ってやっぱアレなのか?
まず抜い――……と思考を中断する勢いで突然優斗に腕を引っ張られた。
一瞬で距離が縮まって優斗と視線が絡んだ。
次の瞬間には距離がゼロになって、唇が触れ合った瞬間優斗の舌が割って入ってくる。
俺の腕を掴んだ優斗の手、そして絡みついてくる舌が普通より熱いことに気付きながら余裕なく舌を動かしてくる優斗の背中に手を回した。

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