あまくてやわらかい。B


お互い同時に舌を差し込もうとして交り、遊ぶように咥内を行き来しながらキスを楽しむ。
風呂で温まってきていた身体が別の熱に侵されていく。
俺にしがみつく捺くんの下半身は芯を持ち始めいて、俺のだって同じように反応し始めている。
捺くんの腰を抱えて性器同士がぶつかるように触れあわせた。
お湯の中だから直接擦れ合わせてはいるけれど普通よりも感覚が少し違う。

「……んっ」

捺くんの身体を揺らしながら双丘に片手を下ろし、割れ目へと指を這わせていった。
後孔に触れほんの少し指先を沈めるとくぐもった声を出して捺くんが唇を離してしまう。

「痛かった?」
「へーき」

よかった、と笑いながらゆっくりと様子を確かめながら指を沈めていく。

「……っ……は……優斗さんっ」

眉を寄せた捺くんは甘い吐息を漏らしたけど俺の胸元に手を置き上半身をわずかに離した。

「ちょっとストップ」
「シない?」

いつもならもっととねだるように密着してくるのにと、悪戯するように埋めた指で肉壁を擦ると捺くんはびくりと身体を震わせ首を縦に振った。

「なんで?」
「す、するけど。明日平日だしさ、風呂でするよりベッドでゆっくりしようよ。だって俺いましてもあとでまたシたくなるし。優斗さんキツクなるかなーって」

俺は平気だけど。
言いかけたけれど確かに明日は平日で、俺よりも身体に負担のかかる捺くんのことを考えれば今は我慢したほうがいいのかもしれないな。

「そうだね。俺は全然大丈夫―――だけど、ベッドでゆっくりしようか」

多少残念な気持ちを持て余しながら指を引きぬくと、んっ、と捺くんが声をこぼし俺と同じように残念そうな顔をしているからつい笑ってしまった。



**side捺―――*



風呂から上がってリビングで互いの髪を乾かしあう。
乾かしてもらうのも好きだけど乾かすのも好きだ。
さっきは風呂でいいムードになりかけたけど平日だから泣く泣く断念した。
あー週末だったらなぁ。
しかし―――どうしよう。
俺はもう乾かしてもらい終えてて、いま優斗さんの髪乾かしてる。
俺と違って社会人だし、ちゃんと整えながら乾かしてるんだけど、どうやって切り出そうかなーって頭の中は軽く緊張。
今日の付き合って一年目になにか用意しようかなって思った。
ペアリングとか……っていうのも考えたんだけど、高校生の俺が買える指輪なんてたかがしれてるし。
俺はともかく優斗さんに安モンつけさせらんねーから却下。
いつかペアリング買えたらいいなー。
できれば俺があげたいんだよな。だって優斗さんにはいつもしてもらってばっかりだし。
なーんて、いつになるかわかんないけど。

「……ね、優斗さん」

そんでいろいろ考えていいのかどうかわかんないまま落ちついたのは―――。

「なに?」

ドライヤーをオフにして隣に並んで座る。

「あ、あのさ……」
「うん?」
「写真撮らない?」
「え?」
「……デ、デジカメあるし」

記念になるものもいいけど、シンプルに思い出残すのもいいかなとか思ったりして。
そりゃ旅行行ったときとか写真とるけど日常じゃ写メは多いけどちゃんと写真とらないし。
だから一年に一度、この日は毎年とるようにしたらどうかなーって。
1年後の俺は高校生じゃなくなってて、二年後の俺は十代じゃなくなってて。
5年後にはもう社会人になってて。
一年の同じ日に毎年撮っていったの見たら変化とかわかんのかなーとか、俺も大人になったなーとか思う時がくるのかなぁって。
乙女思考かなって思ったけど、別に変じゃないよなって……。

「いいけど。どうしたの、急に?」
「え、いや、別に……。そのたまにはいいかなって」

優斗さん今日が付き合って一年目って気づいてないみたいだし、写真撮りたい理由言うのも恥ずかしいから適当にヘラヘラ笑ってデジカメを鞄から取り出した。
セルフタイマーで撮ることにしてテーブルの上で置き場所を調節する。
優斗さんは不思議そうにでも楽しそうに俺を見ていて、気恥ずかしさを感じながらセット完了。

「じゃ、じゃあ撮るよ?」
「はい、いいよ」

二人並んで、距離はゼロ。
身体くっつけて俺はへらりと、たぶんぎこちない笑い浮かべて―――数秒、小さなシャッター音が響く。
確認してみる、ってデジカメチェック。
うあー俺めちゃくちゃ表情硬いし。
優斗さんはいつもと同じ優しく微笑んでるのに……。

「もう一回いい?」
「いいよ。連写にしたら?」
「あーそうだね」

少しは俺もマシに撮れてるのあるかもしれないしな、って連写モードでセット。
また優斗さんのとなりに座って、

「っえ」

腰に回された手に変な声出た。

「誰かに見せる写真じゃないんだよね?」
「う、うん」
「じゃあ平気だね」

って、にこにこしてゼロの距離がマイナスになるくらい密着する。
つーかこんな写真撮ってあとから見れるのか、俺!?
旅行とか行ったときはホテルでベタベタしたりして写真撮ることもあるけど、いまは日常の平日の……素面だし。
デジカメのランプが点灯して、もうすぐシャッターが下りるってことを知らせてくる。
へら、ってまた緊張したまま笑って、さっきと同じようにシャッターが下りた。

「捺くん」

だけどいまは連写モード。
一枚目が取れた同時に優斗さんの声がして見上げたら、視界が暗くなって、

「……っ」

シャッター音が続く中で、唇が塞がれてた。

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