あまくてやわらかい。C


触れるだけ、のキス。
ちゅ、ちゅ、とついばむようなキスがシャッター音と連動するように落ちてくる。
写真撮るときにキスしてたりっつーのはぶっちゃけあるけど、だいたい俺がしかけることばっかり。
優斗さんからで、しかも不意打ちなんてのは初めてでびっくりで俺は固まってしまった。
気づけばシャッター音は止まって、キスも止まってて、

「綺麗に撮れてるかな?」

って優斗さんがにこにことデジカメを取りに行く。
なんで急にキス!?
絶対さっきよりも変な顔してるに違いない。
優斗さんはデジカメを操作しながら戻ってきてその顔は笑ってる。

「よく撮れてるよ」

そう言って見せてもらった写真はばっちりキスしてるもので、俺は鳩が豆鉄砲食らったようなってやつを体現しましたって顔してる。

「……撮り直そうよ!」
「なんで? かわいいよ」
「えー」
「じゃあ、もう一回撮る? 記念はたくさんあったほうが楽しいし」
「うんっ……、って、え!?」

さらりと言われた言葉に驚いて見つめた。

「記念って」
「付き合って一年の記念にの写真じゃないの?」
「知ってたの!?」
「それは」

心外だって感じで優斗さんはため息をついてみせて俺を抱き寄せる。

「俺が捺くんと付き合えるようになった日、わすれるはずないだろ?」

至近距離で視線を合わせて微笑付きで言われたら真っ赤にならないはずがない。
そんな俺に目を細めて優斗さんが顔を近づけてくる。
さっきは不意打ちで驚いて目開いたままだったけどちゃんと閉じて、唇を触れ合わせる。
ちゃんと覚えてくれてたんだってバカみたいに嬉しい。
優斗さんの膝の上に跨って首に手を回して深いキスを交わした。

「―――これからもよろしくね、捺くん」

触れあう唇はあまくてやわらかくて、

「俺も……よろしく! 優斗さん大好き!!」
「俺も大好きだよ」

向けられる笑顔もあまくてやわらかい。
今度は俺からキスして、舌絡めて、

「―――寝室、行く?」
「うん」

明日も学校だし仕事だっつーのに、俺たちはひたすら甘い時間を過ごした。



―――――――
―――――
――――


*優斗side―――**



「これにしようか」

週末、文房具店で捺くんとふたりアルバム選びをしていた。
いろんなアルバムがあるけどシンプルなものがいいかな、と俺が手にしたのは布張りでリングタイプになっている紺色のものだった。

「うん、イイと思う!」

この前の平日、俺と捺くんが付き合って一年の日わざわざ俺に会いにきてくれた捺くん。
もしかしてそうかなと思ったけど、実際そのためだと知ると嬉しさはひとしおだった。
しかも、

「同じシリーズで色違いで買っておく?」
「そうだね。何冊か買っておこうか」

なにか記念になるものをと考えて写真を撮ることにしたというのが可愛くて愛おしい。
シンプルだけどどんなものよりも"いま"を形に残せるし、俺はすごくいい案だと思った。
色を選んでいる捺くんを見下ろして空いた手をそっと握った。
驚いたように俺を見上げて、口を開きかけた。

「周りに人いないから大丈夫だよ」

それより先に俺が言えば捺くんはあたりをみまわして繋いだ手を握り返してくる。
その横顔が少し照れているようで嬉しそうで、俺も頬が緩むのを感じながら一緒に色を選んでいった。
触れる指先はやわらかく、そこから広がる気持ちはあまくてあたたかい。
来年も再来年も記念日を過ごして、写真が増えていくのを想像してやっぱり頬は緩む一方だった。



おわり☆

***あとがき
一周年記念のぷちSSでしたw
エロなかったなw
あいかわらずのらぶあまCPともども、これからもよろしくです\(^o^)/

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