あまくてやわらかい。A


**side捺―――*



「美味しい」

今日のメニューは唐揚げとサラダとみそ汁にごはん。
本当はもっと豪勢な食事を用意したかったけど、週末に優斗さんの手伝いをするくらいでひとりで料理したことない俺には精いっぱいだった。
もっと料理も勉強しなきゃなー。
いずれは優斗さんと一緒に暮らしたいし!
そうしたら優斗さんひとりに料理任せるわけにはいかねーもんな。
大学入ったら飲食店でバイトしようかなー。

「へぇ、味が違うんだね」

受験もまだ終わってないのに先のことばっかり浮かんでしまう俺に優斗さんの感心したような声がかかる。

「あ、うん。3種類の味付けしてみたんだ。肉食べたくって……でも全部同じ味だと微妙かなーって思って」

メインは唐揚げだけだけど、大量に作った。
俺も食いざかりだし優斗さんも結構食べるほうだから皿に山盛り。
優斗さんは美味しいって何度も言ってくれながらたくさん食べてる。
俺も食べてみたけど、自画自賛だけどよくできてた。
平日の夜にこうして一緒にご飯食べてるなんてあんまりないから新鮮で嬉しい。
勉強のこととか仕事のこととか、学校のことなんかを話しながら楽しく夕食は進んだ。
全部食い終わったころにはお腹いっぱい。
優斗さんと二人で簡単に片づけして、食後のコーヒー飲んでから風呂に入ることにした。
もちろん一緒に。



**―――side優斗*




平日の夜にこうして一緒に食事して風呂に入ってとしていると本当に一緒に暮らしているかのような気になってくる。
湯船に向かい合わせになって一緒に入っている今と明日の一人で風呂に入っているだろう今を考えると寂しいな……と思ってしまう自分に内心苦笑した。

「お風呂上がったら勉強見てあげようか?」
「いいよー。今日の最低限のノルマはもうこなしたし! つーか優斗さんは? 仕事大丈夫?」
「うん。俺は大丈夫だよ」

安心させるように笑みを向けると、ホッとしたように捺くんが頬を緩ませる。

「捺くん、おいで」

手招きするとすぐに俺に跨って頬をすり寄せてくる。
こういう仕草は猫みたいだな、と笑いながら顎をくすぐってみた。

「……俺、猫?」
「みたい」
「ふーん。じゃあ、引っ掻いちゃおうかな」

可笑しそうに捺くんは身体を密着させて、俺の背中に手をまわすと長くない爪を立ててくる。
痛みは当然なく、悪戯に指先が動く。
くすぐったさに少しだけ声をたてて笑うと、

「痛い?」

そうではないとわかっているけどあえてそう訊いてくる。

「少し痛いかも」

俺もあえてそう言ってみれば、

「じゃあ俺が痛いの消してあげる!」

と捺くんが悪戯気に目を細めて俺の唇を塞いだ。

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