あまくてやわらかい。@


クリスマスが間近に迫った12月のある日。
学校帰りに俺は優斗さんのマンションに向かってた。
今日はまだ週の初めだし、平日だし、それになんてったって俺は受験生。
高三の俺に遊んでる暇なんてねーけど、今日だけは特別だ。
だって今日は俺と優斗さんが付き合いはじめて1年なんだから!
でも優斗さんは仕事が忙しいし、今日は会う約束はしてない。
一年目―――を覚えてるとも限らないし。
俺自身そういうの覚えちゃって祝いたいヤツだったなんて優斗さんと付き合うまで思わなかったし。
家には泊るって言ってきた。
優斗さんは仕事遅いだろうから夕食作って、んで俺は帰ってくるまで勉強しておこう。
お袋に教えてもらったレシピの手順を思い出していたらマンションについた。



**―――side優斗*



午後8時半。
帰宅すると電気がついていた。
一瞬驚いて、だけどすぐに捺くんの靴があることに気づく。
思わずふと口元が緩んでしまっていると、リビングから捺くんが出てきて駆け寄ってきた。

「お帰り、優斗さん!」

笑顔の捺くんは勢いよく俺に飛びついてくる。
まるで犬のようで可愛いなとその身体を抱きとめて顔を覗き込んだ。

「来てたんだね。遅くなってごめんね」
「いや、俺が勝手にきただけだし! 平日なのに俺こそごめん!」
「俺は捺くんに会えて嬉しいよ。でもお家は大丈夫?」
「うん。泊りで勉強してそのまま学校行くって言ってきたし」
「そう」
「ちゃんと今も勉強してたから!」
「えらいね」

志望校のランクを上げた捺くんは本当に真剣に勉強に取り組んでいた。
笑みを返しながら頭を撫でるとくすぐったそうに笑って顔を寄せてくる。
その唇にキスを落とす。
ついばむようなキスを何度か繰り返して離れた。

「ね、優斗さん。お風呂にする? ご飯? それとも俺?」
「……」

俺の目を覗き込んで笑う捺くんは楽しそうでからかいの色が滲んでいて、その様子がやっぱり可愛くてきっと俺の顔はだらしなく緩んでるだろう。

「そうだな、お腹空いてるから―――捺くんを味見して」

もう一度唇を触れ合わせる。
今度は触れるだけでなく、舌をいれて、絡めて。

「……っ……ん」

小さく漏れる捺くんの甘い声と舌と、そして体温と。
その存在だけで疲れなんて全部吹きとんでいく気がした。
まだ玄関だというのにしばらくの間、甘いキスをかわしていた。

「―――味見が終わったらご飯食べてお風呂入って、捺くんにしようかな?」

濡れた捺くんの唇に親指で触れながら言えば、ほんの少し頬を赤くさせた捺くんは大きく頷いて俺の手を引っ張る。

「じゃあ俺夕食温めるから優斗さん着替えてきてね」
「うん」

まるで新婚のようだな―――なんていうことを考えてしまいながら言われるままに着替えに自室に向かった。

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