お返しにご注意!E


――――――side智紀


頭の中に響いてくる水音を聴きながら優斗の口内を味わって、ニットシャツの中へと手を滑り込ませる。
すぐに優斗の手が俺の手を塞ごう掴んできたから、すかさず―――脇腹をくすぐった。

「……ッん?!」

こちょこちょーとくすぐるとくぐもった声がこぼれ身動ぎする。
顔を離そうとするから離れないよう舌に吸いついて絡め取って、また吸いついて、舐めまわして。
そんな深いキスをしながら、俺のことをムッとしたような目でにらんでいる優斗に目で笑いかけた。

―――ほんと、面白い。
さすがにすぐには流されてくれないよな。

どうやってもキス以上はさせてくれないらしい優斗をどうやったらその気にできるのか考えを巡らせながら、目をあけたままキスしてるのも微妙だから目を閉じた。
予想通り、優斗のキスは上手い。
1月の俺の誕生日に一夜を共にしたあの日から――といっても単純に同じベッドで寝ただけだけど――ムラムラしてしょーがなかった、というのは本当だ。
さっき優斗に言ったこと、そのまま。
さすがに俺だってまさか親友に盛る、なんてことあるはずない。
きっかけはどうしたってあの夜だ。

酔いつぶれた俺を優斗がベッドに運んでくれたらしく、深夜にふと目がさめたら俺の横には寝息をたててる優斗がいて。
1月のその日は雪も降っている寒い日で、寝室は暖房がなにもついていなくて冷え切っていた。
その上、俺と優斗はベッドに寝てはいたけど毛布もなにもかけてない状態だったから、一旦目が覚めると俺は寒くてたまらなかった。
とりあえず毛布と布団を、としていたらすぐ隣に寝ていた優斗が抱きついてきた。
たぶん、寒かったんだろうなってのはわかる。
俺で暖を取るようにしがみついて、寝言で

「あったかい……」

なんて呟いて。
うん、俺は悪くない。
そんな可愛いことされて、ムラムラこないほうがおかしい。
ずいぶんあっちのほうもご無沙汰だったし、ぎゅうぎゅう抱きしめられたらムラムラムラムラするに決まってる。
それを押さえて、頬ちゅーで終わらせたんだから逆に褒めてほしいくらいだ。
酔いつぶれて寝てる相手に好き勝手するほど俺も鬼じゃないし?
相手は親友なんだから、と我慢した俺は褒められるべきだと思う。

で、その夜はそれで終わって、あとはやっぱり優斗に言ったとおり。
それ以降、どうやら優斗に俺のやる気スイッチはオンになってしまったらしく会えばムラムラするようになったわけだ。
というわけで、バレンタインを経て今日はお返し。
ずいぶんな暴挙だろうけど―――

「……っ……とも、き……っ」

脇腹のくすぐり攻撃が効いたのか、濃厚べろちゅーとのコンボで優斗の息はかなりあがっていて、いつも柔らかな表情を浮かべている顔がいまは赤く染まり瞳は艶やかに光っていて―――ムラムラしないわけがない。

「ゆーと」

脚の間に足を割りこませて、ぐ、と押し付けると下肢に少しだけ硬くなってきてる感触。
それに自然と口元が緩むのを感じながら、優斗の手をとり、その人差し指を口に含むと軽く噛んだ。
舌を出して、視覚的効果を狙い指を舐め上げて見せて―――

「シようよ」

囁けば、優斗はしばらく俺を見つめて、熱を帯びたため息を吐きだした。

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