お返しにご注意!D


しまった、と思うけど遅い。
あっさりと舌は絡み取られて熱くまじわってくる。
必死で引っ込めようとするけどそうすれば口内をさぐるように舐められ、粘膜をくすぐられ好き勝手に荒らされる。
抵抗しようとすれば結局絡みつかれてざらざらと互いの舌が擦れあって舐めあって。
ああ、もう―――。

だから嫌だったんだ。

響く水音と、息継ぎのたびにどんどん深くなっていくキスにため息をつきたくなる。
ああ、もう本当に嫌だ。
セックスしたいなんて言いだしたときから危ぶんでいたこと。
智紀のペースに巻き込まれたら最後だってことくらいわかってた。
キスなんてもってのほかだ。
ああ、もう本当に嫌になる。

ムカつくくらい、予想通りに―――智紀のキスは上手い。

親友となんでキスなんてしなきゃならないんだって思うのに、煽情的に動く舌に頭の中が痺れるように熱くなっていく。
それに、さっきほんの一瞬離れたときに小さく笑う智紀が見えて、やられっぱなしなのもどうなのかなんてことを思ってしまった。
経験値は絶対俺のほうが少ないだろうけれど、同い年なんだし……。
なんていう妙な対抗意識が沸いて、明らかに自分で墓穴を掘っているのはわかっていたけど―――途中からは俺からも舌を絡みつかせて、キスに応えてしまっていた。

だけど、キスだけだ。
最中に洋服の中へと手を差し込んで来ようとするからそれは必死でガードした。
いくらゆったりめのソファとはいえ、大の大人の男ふたりが横になってる上にキスしながらの攻防戦とか窮屈でしょうがない。
いったいどれくらい続けていたのかキスがようやく終わったころには多少お互いに息があがっていた。

「気持ちよかった?」

濡れた唇を舐める仕草が目に痛いくらいに色気に溢れてる。
俺を見下ろす目はキスする前よりさらに一層欲に濡れている。

「……別に」

よかった、なんて言えるはずがない。
そう呟けば智紀が吹きだして、唇が触れそうなほど顔を近づけてきた。

「優斗ってツンデレだったんだな」
「……ツン……? は? なんで」
「だってさー、そんな色っぽい顔でもっとキスしてほしそうな顔して、別にとか言っちゃって。可愛いね」
「……」

本当にバカじゃないのか、智紀は。
頭痛通り越してめまいさえ感じていたら、

「いい、って言うまでまたキスね」
「……いい」
「はいはい」

と、また唇を塞がれ―――、否応なく、俺の意志に反して身体には熱が燻りだしはじめていた。

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