お返しにご注意!C


言葉とともに近づいてくる顔。
もちろん顔を背けると、頬に柔らかいものが触れる。

「なんで退けるの」
「退けなきゃキスしてしまうじゃないか」
「キスしたかったんだけど」
「俺はしたくない」
「俺はしたい」
「俺はしたくない」
「優斗、俺のこと好きじゃないの?」
「友人として好きです」
「俺は友人以上好きだよ」
「……」

―――疲れる。
キリがなさそうな会話にうんざりしてため息をついた。
顔はそむけたままだからはっきりとは見えないけれど、智紀は相変わらず笑っている雰囲気は感じる。
いったいどうすればいいんだろう。
冗談じゃなく、本気だということだけは伝わってくる。
それは本気で"好き"だとかじゃなく、本気でセックスするぞという意欲が伝わってくるというか……。

「ゆーと」

無防備にさらされていた耳に息が吹きかけられ、ぞくりとした次の瞬間には耳朶を甘噛みされ舌が耳孔に這ってきた。

「おいっ、やめろって!!」

その上、身体を覆うようにのしかかってきて全身で拘束され、抵抗しようにもできない。

「シようよ」

低い囁きが吐息とともに頭に響いてくる。

「……っ」

ぞくり、ぞくり、と耳から脳や首筋全身に走る悪寒。
悪寒だ、悪寒。
耳を食むように噛んだり耳孔を舌で舐めまわしたり。
微かな動きや水音でも直接響くからひどく大きく聞こえて、またぞくりと背筋を冷たいものが這う。

「やめろ……って」
「……だーめ」

執拗に耳を弄られる。
逃げたいけど、全身の体重をかけるように覆いかぶさられてるからどうしようもない。
顔を背ければ今度は正面を向かなきゃなるし、そうなれば今度は別の場所が危険にさらされる。
どうしようもない状況で耳だけじゃなく押さえられてた腕から手が離れ身体に這いだす。

「やめろってば!!」
「やだ」
「智紀!!」

身動ぎして、解放された手でなんとか押しやろうとする。
体格は似たようなものだし、力の差もそうないはず。
だからかさりげなくだけど智紀も俺を押さえこむのに結構力を入れてるのは気づいた。
そしてもう一つ―――気づく。

「……なんで」
「なに?」

耳から口が離れていって、ちらり横目に見ると智紀が俺を覗き込んで目が合う。
ニヤニヤとした智紀に思いっきり眉をよせてみせた。

「なんで、勃たせてるんだよ……」

もう本当にため息と増す頭痛。
硬い感触が確かに腰あたりに当たっている。

「それは興奮してるからだろ?」
「だからなんで」
「だからセックスしたくってさっきから言ってるだろ、優斗」
「俺はしないから」
「ほんっと頑固だなぁ」

頑固とかいう問題じゃない。
いったいどうすれば逃げれるのか。
必死で頭を働かせてると、俺じゃなく智紀からため息がこぼれ、いきなり顎を掴まれ正面を向かされた。

「とりあえず、キスしよう」
「だからしないって言って―――っ」

あ、と気づいたときには距離がゼロになって唇を塞がれ、あっというまに口内に舌が割り込んできた。

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