あまいチョコレートとご一緒に♪A


今日はバレンタインだ。
俺の片手には花束。
日本では女性から男性にというのが主流だけれどもとは恋人の日。
なので捺くんをイメージして花束を作ってもらった。
ピンクのバラを中心に作ってもらったけど、気にいってくれるかな。
いままでも花を贈ったことはあるし、大丈夫だろうけど。
あとは食後のデザートにと昨日のうちにホワイトチョコのレアチーズを作っておいた。
きっと捺くんもチョコレートを用意しているだろうから、今日のデザートは甘いものづくしだな。

ふ、と自然に頬が緩んだときちょうどエレベーターが止まった。
おりれば俺の部屋まではすぐ。
インターフォンを押そうか悩んで、いつもなら押さないんだけど今日はなんとなく押してみた。
そして玄関ドアを開ける。

「おかえり!」

すぐにリビングから捺くんが笑顔で駆け寄ってきた。
今日はシチューなんだろうか。
美味しそうな匂いが漂ってきていた。

「ただいま」

俺も笑顔を向けて、花束を差し出す。

「捺くん。これ」

もう何回か一緒にバレンタインを過ごしてはいるけど、少し照れてしまう。
いつもありがとう、と渡すと捺くんは顔を輝かせて頬を緩めた。

「ありがとう、優斗さん!」

嬉しそうににこにこしている捺くんが俺に抱きついてくる。
そしてそのまま唇が触れてきた。
リップ音を響かせて、ほんの数秒で離れていってしまう唇を目で追っていると捺くんが俺の顔を覗き込む。

「ほんと、嬉しいよ。飾るね」
「うん」
「そうそう、優斗さん。風呂とごはん、どっちにする?」
「え? ……えと、ごはんかな」
「わかった! じゃあ、用意するから優斗さん着替えてきてね」
「ありがとう」

いつも帰宅したらまず夕食だ。
訊かれたことがなかったから一瞬驚いたんだけど、お風呂にしたほうがよかったんだろうか?
だけど捺くんは花束を見て笑顔のままだから別にお風呂があとでもいいんだろう。
―――ベタだけど、お風呂かごはんか訊かれるなんて新婚……。

「ちゃんと手も洗ってきてね」
「う、うん」

思考がどうもふわふわしてしまっていたら横から捺くんが言ってきて慌てて頷いた。
そのまま捺くんはリビングに戻って、俺は着替えるために寝室に。

「……ん?」

足を踏み入れた寝室はいつもとかわりない。
ベッドメイクは捺くんがしたのかきちんとされてあって、だからといって光景は朝とかわりない。
だけど―――。

「アロマ?」

そんなに気にはならない程度に甘い香りが漂っている気がする。
こればバレンタイン仕様なんだろうか?
見まわすとベッドサイドにアロマポットが置いてあった。
昨日までははなかったはずだから買ってきたんだろうか。
バレンタインだから?

「……」

傍目から見られたら不審がられそうなくらいに頬が緩んでしまって、頬を叩く。
ひとまず着替えだ。と、着替えてからリビングへと向かった。



***


優斗さんからもらった花を花瓶に活けてテーブルに飾る。
まだまだ寒いし今日はシチューにした。あと肉が食いたかったからから揚げとサラダ。
一緒に暮らすようになって前以上に料理するようになったし腕も多少上がったと思う。
料理上手の優斗さんには及ばないけどな。
シチューをスープ皿につぎながら、食後のことを考える。
優斗さんが昨日作ってくれてたチーズケーキ食べて、俺もチョコ渡して……そして!
今日は平日だし激しいのはアレだけど、喜んでもらえるようにがんばるぞ!!
気合をいれなおしてテーブルセッティングしてると着替えた優斗さんが入ってきた。



***

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