05

月曜日と木曜日はそれぞれ茶道部と華道部がある。

私は三年生が少ないがため、(押し付けられて)その両方ともの部長をしている。

そして今日は木曜日。華道部の日である。

顧問が大量に花を用意したのに今日参加した部員は私だけ。

いつものように生けたのだけど花が大量に余ってしまった。

「よし、みょうじ。お前三年生の各教室の花瓶に余った花飾ってこい」

困った顧問の思い付きでこんなことをしなくてはならなくなった。

だから、今花を運んでいるのだけれど量が多すぎて重いし前が見えないしで休憩中。


このままここに放置してしまおうか。

『駄目だ駄目だ、勿体ないし』

普段ならジャッカルに頼むけど、今アイツは中学最後の大会にむけてがんばってるからこんなことで練習の邪魔なんてしちゃうのは申し訳ない。

『さて運ぶかー』

両手で持てるだけ持っての花束を持って歩き出す。

前が見えないのがちょっと心配です。

そんなときドンっと誰かとぶつかった。

『うわぁっ』

「!」

バランスを崩して花をばらまきながら転んでしまった。

『いててて』

「すまない、大丈夫か?」

尻餅ついて転んだためお尻が痛い。

ぶつかった人が手を差しのべてくれてその手を借りて立ち上がった。

『こちらこそすみません、前が見えなくて』

その人の顔を見ずに謝る。

あれ、この人の声なんだか聞いたことある気がする。

「俺も急いでいたからな悪かった……お前は」


恐る恐る顔を上げると柳くんが立っていた。
うわぁ、ジャージだ、ジャージ。

そ、それにしてもち、近い……

「みょうじだったのか…、転んでいたが大丈夫か?」

『あ、うん。だ、だだだだ大丈夫!あ、そうだ』

転んだ時にばらまいてしまった花を思い出して拾おうとしゃがんだ。そしたら柳くんも座って落ちた花を拾ってくれてる。

「拾うのを手伝おう…これは花、か?」

『うん、華道部で余った花なんだけど。』

「どこかに運ぶのか?」

『捨てるの勿体ないから先生が三年生の各教室に飾ってこいって…だから運んでたんだけど、量を減らして出直すわ』

近くで、すごい近くで柳くんの声がする。
心臓がばくばくうるさい。

声裏返ってないかな。
変なこと言ってないかな。

そんなことが頭の中をぐるぐる回る。目の前までボヤけてきた。ヤバイなこれは…

「出直す必要はない、運ぶの手伝おう」

『え?』

「ちょうどお前と話をしてみたいと思っていたからな」

『…………』

あれ、幻聴?幻覚?三成様が目の前にいて…しかも私と話したい?

そんなばなな。でも実は私も貴方とお話がしたかったのです。

あぁ…嬉しすぎて何だかどんどん息ができなくなってきた気がする。


「…い、…………おい」

あれ?誰かが私を呼んでいる?

「おーい大丈夫か?みょうじどうした…ボーッとして?」

どんどんボヤけていた視界がはっきりしてきた。
すごい近距離に柳くんの顔が。

『はっ!?』

…ぼたぼたぼたぼた


「また………鼻血か」

『ご、ごめんなさい』

「少し待っていろ」

『え?』

そう言うなり私の分も含め落とした花を広い集めてすみに置き、どこかに走って行ってしまった。

『待っていろって?』

この前のことがあり今日は一応ティッシュを持ってきたのだけど……今日この前にもまして出血が多いみたいだ。

柳くんはすぐに帰ってきた。

「今日はティッシュ持ってたのか」

『ジャッカルに持って行くように毎朝言われるから』

あははと苦笑いするとよい心がけだと笑われた。

かっこよすぎるやろ←

「だが止まりきってないな。ほら、手を離せ」

『?』

手を離すとそこに白いタオルが触れる。

「止まるまでこれで押さえておけ」

『ふぁい』

「鼻血には頭を高くして仰向けになるのがよいと聞くが……うむ」

柳くんが私の鼻をタオルで押さえてくれているというのだけで鼻血出そう。


「みょうじ、横になれ」

心のなかで悶えていると柳くんがそう言った。

訳もわからず横になるとすぐに頭が持ち上げられて何か固いのか柔らかいのかわからないものに頭が乗った。


『!!!?』

何故にこりと笑う柳くんの顔が見上げたそこにあるの?


「ふむ…これでいいだろう」


いや駄目だろ!!!?





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