『ジャッカル』
「ん」
私がジャッカルに声をかけるとジャッカルが私にお茶を渡す。
それをコップに注ぎ私は飲む。
「なんだか熟年夫婦みたいっすね」
「ぶっ!!」
『そう?』
赤也くんのその言葉にジャッカルは吹き出した。
「ほら、名前呼んだだけで相手が何とってほしいのかが分かるってあるでしょう?」
『まあ、付き合いが長いし。普通じゃないかしら』
「てか、なまえと夫婦とか俺絶対やだ」
『私もお断りよ』
だいぶ空気になれてテニス部の彼らと会話も出来るようになってきた。
「てか夫婦というより、ジャッカルがこき使われてる感じじゃ」
『まあ、そうとも言うかしら?』
「……………………」
仁王くんの言葉にこう返したらジャッカルが会話を放棄した。
『拗ねるな、冗談だから』
「…………頭を撫でるな!」
だから頭を撫でたら怒られた。
『奏ちゃんはどうしてテニス部に?』
「幸村部長に誘拐まがいに連れていかれてそのまま入部しました」
『……………………』
「うわぁ、そんなヤバイ人を見るような視線止めてよー。嬉しすぎて照れちゃう」
誘拐は駄目だろ。誘拐したくなる気持ちは少し分かるが……
「多分わかるのも駄目だと思うけど」
さっきの幸村の言葉は聞かなかったことにしようかな。
『ごちそうさまー。いいね大人数で食べるのも』
「みょうじはいつも誰と食べてるんだ?」
『一人で食べてるよ?ジャッカルが暇なときは一緒だけど』
ブン太がポッキーを食べながら聞いてきたのでそう答えたらみんなが目が点になった。
ジャッカルと幸村以外。
何故?
「何故一人で!?」
「おかしくないか?」
「だって人気者じゃん!」
赤也くん、老けてる人だから真田くん、それからブン太が矢継ぎ早に言う。
『私、人気者なんかじゃないわ。寧ろ遠ざかられてるし』
「人気だからこそ、多分人が近付かないんだよ」
そんなに以外なのか皆、すごい顔だ。
「ならば、俺達と一緒に食べれば良いことだ」
そんな中サラリと言ったのは柳くん。
「俺達もいつも一緒に食べている訳ではない。週に一度くらいだが」
一人だと妄想も出来るし、それに柳くんと一緒になんて恥ずかしいし、血液が足らなくなっちゃうかもしれないけどあの素敵ボイスが生で聞けるなら…いいかもしんない
「いいんじゃねえか?」
「じゃ、決定。ジャッカル、皆で食べるときなまえと一緒に来てね」
「おう」
『なんだかすみませんね』
「俺らは全然いいっすよ」
「寧ろ大歓迎ですよ、ね?仁王くん」
「どうでもよか」
「弦一郎も良いだろう?」
「てか俺が決めたからもう覆せないよ」
幸村精市、テニス部部長に君臨する男。
黒属性の彼には誰も逆らえないみたい。
こうして私は週に一度だけテニス部の皆とご飯を食べることになったのだ。
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bkm