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夏と雪

「あ」「あ」

 夏霧穂邑と真雪青癸はその日三度目の邂逅を果たした。

「ホントお前なんなの? メイリデ嬢のストーカーなの? キモい」
「いやボク赤にキョーミは無いですしおすしー???」
「ハッ、まさかオレの身体目当て!? 燃やすぞ」
「テメェの濁った赤にゃもっと興味ねーよカス」
「誰がカスだとアアン!?」
「黙れカス!! 去れカス!! 消えろカス!!」
「うるせェ単細胞! オレのメイリデ嬢が怯えるだろ!!」
「でけぇ声出してンのはテメェだろカス!」

 ぎゃあぎゃあと言い合う赤と青を交互に見詰めながら、メイリデはアイスキャンディーを舐める。ソーダ味である。美味しい。

「燃やすぞ」
「やってみろテメェのちんけな炎の色なんてボクの色になってしまえばゴミクズ同然だからな」
「……飽きたの」

 ぺろぺろと舐めていたアイスキャンディーを半分ほど咀嚼し終えたところで、メイリデはそれを目の前の青癸に突き付けた。

「お、おう、なんだ、やる気か」
「……いる?」

 こてり、と傾げられた首に、青癸はまばたきを繰り返す。
 そしてそれを聞いた、少女を抱える男はと言えば、持つ異能は傲慢型であるというのに目の中に嫉妬の炎を燃やしていた。

「おうおうおうお前いい度胸じゃねぇかオレの目の前でメイリデ嬢に手ェ出しやがるとは」
「いやいやいやいや!? テメェの目は節穴ですかァコラァ! どう考えてもそっちの子が勝手に突き出してきたんでしょーがあっでも君の赤はそこのクズより綺麗だね貰っていい?」
「だーめに決まってんだろコラァ! 燃やすぞ! 灰になれ!」
「やーなこったー!」

 あわや燃やされそうになったところで、青癸はゆらりと後方に下がり軽く炎を避けるとべえ、と舌を出して走り去っていく。
 ──逃がしたのは、通算三度目。溶け掛けたアイスキャンディーをまた、ぺろぺろと舐めながら、メイリデは小さく首を傾げた。

「喧嘩するほど、仲が良い……」



(夏霧穂邑と真雪青癸)

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