末弟とカプチーノ
解散した後、特にすることもなくてふらふら歩いていると目の前に知っている人影。後ろ姿だけだとイマイチ特定しづらいけど、多分カラ松お兄ちゃんじゃないし、じゃあ他に街中に来るような兄と言えばトド松お兄ちゃんくらいしか知らないから多分あれはトド松お兄ちゃん。
「トド松おにーちゃんっ!」
「わっ!」
肩に手をポンッと置きながら後ろから声をかけるとビクッとしてお兄ちゃんが振り返る。やっぱりトド松お兄ちゃんだ。
「なんだ〜、舞鈴か〜。もービックリさせないでよね〜!」
「あはは、ごめんごめん!ところでどこに行くの?」
「んーとね、駅前に出来たショップだよ。カフェと本屋さんが一緒になってる店が一階にあって、洋服屋さんが二階にあるらしいよ。」
「へぇー…ねえ、それ私も一緒に行ってもいい?」
もちろん!花が咲きそうな笑顔でそう言われるとこっちもニコニコしたくなる。トド松お兄ちゃんはお洒落だし女の子の気持ちを汲み取って話してくれるから、女の子友達といるみたいでとても気が楽だ。だからとっても好き。兄妹として、ね。
「少しカフェで休憩してから洋服見に行こっか。」
「うん!」
カフェに入るとふわっとコーヒーや紅茶のいい香りがした。この感じすごく落ち着く。うん、好きかも。
「舞鈴は何頼む?」
「うーん…じゃあカプチーノ!」
「食べ物は?」
「んー…大丈夫かな!」
了解。と右手を上げて店員さんを呼ぶ。すみませーんとか大きな声で呼ばないあたり、こういう店には来慣れた感じなのだろう。
「ご注文を承ります。」
「カプチーノ1つとカフェラテを1つ。あとマフィンとスコーンも1つずつください。」
「かしこまりました。」
そんなに食べるのか。まあ別にいいけど。目の前でスマホをいじる兄は時々顔の高さまでスマホを持ち上げたりしている。何してるんだろう。
「見て見て、これ舞鈴。」
「えっ、ちょっ!何、写真撮ったの?!うそ、やだ消してよ!」
「えー、やだよ。」
消して!嫌だ!そんなしょーもないやり取りをしているといつの間にやら注文した商品が来ていた。
「うわぁ〜!美味しそう!」
「そうだね。そうだ、舞鈴。」
「え、なに?」
「僕一人じゃこんなに食べきれないから半分こしよ?それに、僕だけ食べるのもつまらないしね!」
スコーンとマフィンを手際よく半分に切り分ける。確かに実物を見たらすごい美味しそうで食べたくなったけど。それを見過ごさないところがさすが兄って思う。
「…ありがとう。」
「どーいたしまして!」
ちょっと照れながらカプチーノに口をつけるとふわっと口の中いっぱいに幸せな香りが漂う。目の前でニコニコしながらマフィンを食べるトド松お兄ちゃんにちょっとだけ感謝した。でも後で絶対に写真だけは消してもらうけど。
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