お揃い七着


カフェで少し休憩した後ちょこっと本屋さんを見てから二階の洋服店へ向かった。思っていたよりも広くていろんな種類の洋服を取り扱ってる店だ。


「結構広いね。あ、ほらレディースもあるよ。」

「ほんとだ!私ちょっとあっち見てきていい?」

「うん、いいよ〜。好きに見てきて?終わったら連絡入れてくれればいいから!」


分かったーといいながらレディースの方へ歩いていく。レディースはメンズよりも幾らか華やかさが増していて違う世界に来たみたいだ。


「何かお探しですか?」

「あっ、いえ。特に買う予定はないのですが、隣のメンズで兄が買い物をしてるので。」

「お兄様といらしてるんですね。それなら兄妹でも着れるペアルックとかもございますのでご案内しますよ。」


え、あ…何も言い終わらないうちにこちらですとさっきいたメンズに戻される。ええー、別にペアルックとかは要らないんだけど…しかも兄妹の中で私とトド松お兄ちゃんだけお揃いって絶対おかしいでしょ。


「あれ?舞鈴、どうしたの?レディース見てたんじゃないの?」

「あっ、お兄様ですか?」

「そうです。」


私が会話に入る隙を与えずにペアルックの話が進んでく。トド松お兄ちゃんが妙にノリノリなのは見なかったことにしたい。


「買おうかなぁ〜。」

「ええっ?!買うの?!二人だけお揃?!絶対他の五人にコテンパンにされちゃうよ?!」

「うっ…確かに…でも舞鈴とお揃いとか持ってないし欲しいじゃん…」

「それでしたら次回他のご兄弟様もご一緒にいらしてください。いろんなお色を取り揃えております。」

「えっ?何色があるの?」

「赤、青、緑、紫、黄、ピンク、オレンジ、ベージュ、茶、黒の10種類です。」


なんだそれ。お兄ちゃん達のイメージカラー全てが取り揃えてある。これ絶対買う流れでしょ!買っちゃうでしょ!いやもうこの際七人でお揃いならいいにするけど!


「兄さん達からお金は後で貰えばいいよね。うん、じゃあ赤、青、緑、紫、黄、ピンクをください。舞鈴は?」

「え、あ、じゃあ黒で。」

「かしこまりました、ありがとうございます!」


結局買っちゃったよ。今まで一度もお揃いを買ってこなかったのに。ほらー、店員さんの満面の笑み。そうだよね、七着だもんね!儲かってるよ!ああ、兄のニヤつく顔が目に浮かぶ…。

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