麻薬常習犯
「ねえ、オニイサン。オニイサンが今隠したもの、それ何かなぁ?」
不気味な笑顔を浮かべた一松を盾にトド松が麻薬常習犯を追い詰める。喧嘩沙汰にならなければ俺達長男組の出る幕はない。
「なっ、何も隠してねえよ!!」
「嘘はいけないよ、オニイサン?」
マフィアと言ってもいろいろ種類がある。その殆どが犯罪に手を染めた集団であるが、稀にそうでない集団もある。対犯罪マフィア用の集団。それが俺達だ。俺達自身が一般市民に対して犯罪を犯したり、法を犯したりはしない。指名手配されている集団を追い詰め殺す。危険物の物流を断つ。だから、これも全て仕事のうちなんだ。
「う、ウソなんてついてねー!お前らなんて死ね!」
「うわ、来た。」
「ちょ、麻薬常習犯ってホント厄介…兄さんたち出番だよ!」
ハイハイ。やっぱそーくるよね。暴力沙汰にならなければ生きて帰れたものを。何が嫌かって、俺達喧嘩になると手加減できねーのよ。かろうじてカラ松はセーブしてるみたいだけど、大体俺と十四松でトドメ刺しちゃうから無意味だし。
「おそ松兄さん聞こえてる?」
うちの指揮官であるチョロ松から通信が来た。
「ん?聞こえてるよ〜。」
「今回は一人だし十四松だけで充分だから、おそ松兄さんはその場で待機してて。」
「はいよ〜。」
「カラ松。」
「どうした、チョロ松。」
「カラ松はそのままトド松と一松の回収に向かって。」
「了解だ。」
「えー、なに?俺だけ仕事なし?」
「おそ松兄さんの出る幕でもないでしょ。それから舞鈴。」
「はーい。」
「一応念の為カラ松に付き添って。必要ないとは思うけど。」
「了解!」
え、まじ?ほんとに俺だけ仕事なし?出る幕なし?何それつっまんねー!しょーがないからビルの上から高みの見物と行きますか。タッタッタッと壁を蹴り上って、現場近くのビルの屋上まで駆けつけ下を見下ろす。そこにはナイフを持った麻薬常習犯と俺の弟達+妹が既にいた。カラ松と舞鈴でトド松と一松を回収し、十四松が犯人に応戦する。お得意のバットを一振りした十四松に犯人が気を取られてる隙に、このビルをカラ松と舞鈴が駆け上がって来た。
「…おそ松、なぜここにいるんだ?」
「あれ、おそ松お兄ちゃん?」
「いやー、だって俺だけ仕事ないんだぜ?暇だから高みの見物でもしよーかと。」
「もー、怖かったぁぁああ!ナイフ持ってるとか聞いてない!」
「トド松はほんっとに喧嘩とか向いてねーよな。」
当たり前でしょ!可愛くないことしたくないし!少し涙目で頬を膨らませて訴えてくるトド松にハイハイと相槌を打つ。
「ふふっ、トド松お兄ちゃんは相変わらず可愛いね。」
仕事中なのに一瞬この場の空気が穏やかになった気がした。やっぱ、女の子がいるって華があっていいよなぁ。華が要るような仕事じゃねーけど。
「ありがとう、舞鈴。でも、舞鈴に敵わないかな。」
「うん…舞鈴の方が断然可愛い。」
「一松兄さん黙って。」
あーだこーだ言い始めた弟達を放っておいて十四松と犯人の様子を見る。まあ、何となく予想はついてたけど、グシャグシャになった犯人の横で血みどろになった十四松がこっちを向いてブンブン大きく手を振っている。終わった合図だ。
「チョロ松、聞こえてるか?」
「聞こえてるよ。」
「こっちは終わったみたい。」
「十四松だけで大丈夫だったみたいだね。よかった。それじゃいつもの場所で。」
「了解……よし、みんな。十四松も終わったみたいだし、"いつもの"行くぞ!」
「「「了解!」」」
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