抜け駆け
ゴロツキを片付けた帰り、アイスクリーム屋さんに7人で寄った。そこには鮮やかに彩られた美味しそうなアイスが沢山並べられており、運動して空いてたお腹が余計に空いた。次男である俺は弟達に先を譲り、弟達がわいわいとアイスを選ぶ姿を眺める。そこに兄であるはずのおそ松がいたように見えたのは気のせいだと思いたい。
「カラ松お兄ちゃんは選ばなくていいの?」
「うおっ!?」
いつの間にか俺の目の前に来ていた舞鈴がビックリした俺を見てクスクスと笑っている。マイリル舞鈴〜!天使の微笑みだ。
「舞鈴こそ、もう選んだのか?」
「選ぼうにも、あれじゃあね…」
ああ、確かに。弟達+おそ松の壁が立ちはだかって全くアイスが見えない。一番年下の舞鈴を先置いて我先にとアイスを選ぶ弟達は餌に群がる子犬のようだ。昔から食事という名の競争社会で育ってきたことがありありと表現されているように思える。
「ねえ、カラ松お兄ちゃん。」
「ん?どうした?」
「ちょっと、抜け出さない?」
「…え?」
「いいからいいから!」
俺の返事を聞かずに手を握り、スルスルと人混みを抜けてあっという間に外へ出てしまった舞鈴と俺。せめて返事くらいは聞いてくれ。まあ、Noという答えはないがな。そうか、舞鈴は俺がYesと言う事を分かっていたということか。フッ、これぞまさにディスティニー!
「…ぃ………!ねえってば!カラ松お兄ちゃん!」
「うわっ!」
「カラ松お兄ちゃんったら、何回呼んでも聞こえてないんだもん!」
「す、すまん…ところで、どこに行くんだ?」
「ちょっとね!ほら、行くよ!」
自然に手を繋いで俺を引いて歩く舞鈴。俺達六つ子と張り合っても3番目に強い舞鈴の手が、あまりにも女性らしい細くてか弱いもので俺はドキッとした。初めて繋いだ訳では無いが、昔つないだ時とは全然変わっていて幾分か戸惑った。いつの間にか大人になってたんだな。そうしていつかお嫁に行ってしまうのか。なんて考えると胸がズキズキと痛んだ。これが娘を嫁に出す父親の気持ち、なのだろうか。何か違う気もする。
「今日はね、友達の彼氏の服を見る為に、メンズをたくさん見て回ったんだ!」
「か、彼氏?!」
「いや、友達のね。」
「あ、あぁそうか。友達の彼氏か。」
「それでね、カラ松お兄ちゃんに似合いそうな服、たくさん見つけちゃったんだ〜!」
花が咲きそうな笑顔で楽しそうに話をする舞鈴がなんだか眩しくて、あまり顔を見れなかった。
「それで俺を連れ出したのか?」
「んー、まあね!カラ松お兄ちゃんは六つ子のなかでもスタイルいいし、顔もイケメンだと思うし、何着ても似合うと思うんだよね!」
「そ、そうか…?面と向かって褒められるとその…照れるな。」
「っ〜〜!その笑顔反則!」
「え、え?なぜだ?!」
「なんででも〜!」
ニコニコ笑いながら走り出す舞鈴背中を見つめていると、ふと立ち止まりこちらを振り返った。
「それにね、今日はカラ松お兄ちゃんとデート、だよ!」
デート。童貞な俺は人生初のデートを妹の舞鈴としているのか。でもそれが情けないとかそういうふうには思わなくて、むしろ舞鈴とでよかったなんて思った。
「そうか、それじゃあ2人で楽しまなきゃだな。」
ーーーその頃の残された六つ子
「あれ?カラ松と舞鈴がいなくね?」
「え、うそっ!」
「セク口ス?!」
「十四松兄さん、セク口スじゃないからね。」
「チッ、クソ松が。」
(((((やりやがったな、あいつ!!!)))))
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