視線の先


「たっだいま〜!」

「ただいまぁ。」

「「「おかえり〜。」」」


家には既に俺おそ松とカラ松、一松の三人が帰ってきていたが特にすることがなく暇していたところに、上機嫌なトド松と舞鈴が一緒になって帰ってきた。一松も二人一緒なのが気になったのか、珍しく自分からなんで二人一緒なのと話しかけていた。まあ、そこは俺も気になってたんだけど、もう一つ気になるのは二人の手にそれぞれあるおそろいの袋。しかもそれなりに何か買ってるみたいだしさ、それって何?二人だけでお揃いとかしようとしてんの?そんなんお兄ちゃん許さないよ?


「あ、これ?大丈夫だよ。兄さんたちの分もあるからさ。お金は後で払ってよね!」

「え、いや…要らないけど…」

「一松兄さん、本当に要らないの?舞鈴とお揃いなのに?」

「いるいるいります。」


俺の視線に気づいたのかトド松が、みんなの分もほら!と言って買ってきたジャケットをズラッと並べた。まじかよ、ちゃんと俺達のカラーが揃ってる。ってことは黒は舞鈴のか。赤いジャケットを手に取ってへぇーと見てる隣にカラ松が座った。さすがトド松と舞鈴のセンスだ、カッコイイな!!という心の声ダダ漏れの顔で青色のジャケットを手に取って眺めるカラ松を眺める舞鈴。それを更に眺める一松とトド松。うーん、なんだろうなこの構図。当のカラ松は舞鈴が見てることを全く気がついてねえし、舞鈴も舞鈴で見られてるのに気づいてねえし。まあいいけどさ。


「なあ、おそ松。」

「んー?なにカラ松。」

「これ折角全員お揃いなんだし、仕事で着ないか?ジャケットだし全身スーツよりはいくらかマシだと思うのだが。」


なるほど。カラ松にしては冴えてるじゃん。うりゃうりゃと頭を撫ででやる(※成人済男性)とやめろおそ松。と結構本気の声で言われた。うひゃー、こえぇー。


「でもさ…」

「え?なに一松。」

「そうすると舞鈴は全身真っ黒になっちゃうじゃん…」

「あ、そうか…確かにそうだな、すまん。」


シュンとするカラ松に、いやそんな落ち込まなくてもよくね?なんて思いながら何て声かけよーかなと悩んでみる。が、何も思いつかないしまあいっかと顔を上げると目の前に自信満々の舞鈴が立っててちょっとビビった。今のはお兄ちゃんマジでビビったよ!


「カラ松お兄ちゃんがそういうと思って、ジャーン!なんとスカートとパンツも買ってきちゃった!下が紺色なら全身一色は防げるでしょ?」


自慢げにドヤ顔で一緒に買ったのであろうスカートとパンツをひらひらさせる。さすが我が妹。変なところちゃっかりしてらっしゃる。この機会に全身イメチェンをするつもりなんだろうな。まあ別に自分の金で買ってるみてーだし関係ないけど。


「そ、それじゃあ…!」

「うん!カラ松お兄ちゃんの言う通り、仕事の時着よっ!」


目をうるうるさせながら舞鈴、ありがとう!とほぼ叫びに近い声を発するカラ松。流石、普段は泣き虫カラ松。カッコイイのは仕事の時だけか。知ってたけどさ。あーあ、これじゃあどっちが上か分かんねーじゃん。


「お前ら二人で盛り上がりすぎだぜ〜、長男様も混ぜろ〜!」


まあ、みんな俺の可愛い弟と妹なのに変わりねえけどさ。

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