「松野さーん。カーテン開けますねー。」



サッとカーテンを開けた先にいたのはひどい傷を負ったあの人。これは運命かもしれない。きっと神様がくれたチャンスなんだ。こんなにも早く話すことが出来るだなんて、想像してなかった分緊張でどうにかなりそう。



「お身体の方どうですか?」

「あ、あぁ。大丈夫だ。」

「それでは包帯取替えますね。」

「い、いや…!自分で、できる…」




包帯を取り替えるため腕に触れようとしたが、松野さんは後ろに後ずさってしまう。病院では包帯は看護師が取り替えるのが普通なんだけどなぁ、なんて思いながら思わずくすくす笑っていると、あ、いや、俺は…変なことを言ったか…?と質問されてしまった。




「変…というか、松野さんは面白いのですね。」

「面白い……フッ、そうか。人を喜ばせるのが俺の使命。面白いと笑ってくれるなら本望だ。」

「使命…?ふふっ、松野さんってよくわからないお人ですね。」

「よくわからない、か。俺は闇に包まれし男。孤独と静寂を愛するが故の闇。」




キリッと決め顔をしておかしなことを言う松野さんはどうも私のツボにはまってしまったらしい。あ、やばい。ずっと笑っていたから流石にお腹痛くなってきたかも。笑い泣きしそう。




「お、おい!な、なぜ泣く?!どこか痛むのか?」




院内で看護師である私が怪我人である松野さんに心配されてしまってる。どう考えてもあなたの方が痛々しいのに。泣きたくなるくらい痛いはずなのに。それでも人のことを心配して気にしてあたふたしている、そんな貴方が気になって気になって。少しでもいいから貴方の心の中に踏み込んでみたいと思ってしまったんです。