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「はぁー!うまいっ!!」
『そうだね、美味しいね。』

2時間街中を歩いてウィンドウショッピングをしたり、なんかわかんないけどプリクラを撮ってみたりした。流石に久々のヒールで疲れた私は喫茶店に入ることを提案し、今に至る。

「ずっと歩かせて堪忍な。ヒールも慣れへんのに…足痛いやろ?」
『ん?大丈夫だよ。気にしないで!ヒールもそんなに高くないし。』
「さよか?ほんならええけど…辛くなったら言うんやで?」
『ありがとう。』

なんか今日は異様に謙也が優しくて調子狂うなぁ。確かに恋人のフリしてるから普通なのかもしれないけど、いつも優しいのにそれ以上優しいとかちょっと反則だよね。私自身も口調を女の子に戻して、気分も女の子に戻ってるのかも。いけないいけない。気を抜かないようにしなくちゃ!

「ほな、次どこ行こか?」
『んー…私は映画見たいかも!』
「よっしゃ!ほんなら映画、見に行こか!」

私が伝票に手を伸ばす前に謙也がサッと手に取って立ち上がる。そのまま謙也はすたすたとレジに向かうから私は小走りでついていく。

『あ、私も払うよ。いくら?』
「いや、ええって。こないな時くらい彼氏っぽいことさせてや?」
『ぁ…ありがとう。』

一気に顔の熱が上がる。あれ、何だろうこれ。どうしちゃったのかな、私。久々に女の子扱いされたから?でも、光には女の子扱いされてるし…。じゃああれかな。彼氏とかいたことなくて彼氏っぽいことされたから?でも、マネージャーとかによくおごってもらってた時は何も感じなかったし…。てことは、謙也に女の子扱いされたから?相手が謙也だから…?

『あはは…まさか、ね。』
「ん?どないした?」
『ななな、なんでもないよ?!』
「さよか?」

そんなことないよね。だってあの謙也だし。白石だったとしても同じ感じになるかもだし!謙也に恋はない!

『絶対ないんだから…』
「なんか言うたか?」
『あ、映画楽しみだなぁって!』
「せやな!何見よか!」

今は謙也の彼女のフリをすることに集中しよう!カップルで見る映画って普通どんなのだろう?やっぱ無難に恋愛モノかなぁ…

『あ、私アレ見たいかも!』
「恋愛ものやなぁ…せやな、あれにしよか!」

《お二人様2,000円になります。》

そういえば、映画の席って意外と近くないっけ?あれ、やばい。恋愛ものって選択ミス?なんか緊張してきたやばいよー!

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