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ついに来てしまった。何がって、日曜日が。これほどまでに日曜日を憂鬱だと思った日はないだろう。決死の覚悟で引き受けてしまった謙也とのデート(?)とにかく私の正体がバレないようにしないとなぁ…光にも一昨日めっちゃ怒られたし…。

「はぁ?!何引き受けてんすか!自分がしようとしてること分かっとります?正体がバレてまうかもしれんのですよ?」
『いや、わかってるよ!わかってるんだけど、あんなに懇願されたら断れないんだもん…』
「はぁー…ほんまに舞鈴はお人好しなんやから…ほんま気つけてくださいね?気抜いたら絶対バレますんで、気抜いたらアカンし周りをちゃんと警戒してください。」
『うん、わかった。』

とまあ、こんな感じですんごい怒られました。でもきっと光を心配させちゃってるんだろうなぁって思うとなんかそれも申し訳ない。

『でも、自分で決めたことだ。』

気を抜かずに、誰よりも慎重に行動しよう。周りに目を向けて人一倍神経を張り巡らせて。まあ、謙也は多分気付かないと思うけど。

≪信号が青に変わります≫

駅までの道を少し急ぐ。10時まで後10分をきった。きっと大丈夫。無事に何事もなく終わる。
今日の服装は純白のワンピースにパステルイエローのカーディガン。レンズ大きめのサングラスにクリーム色のショルダーバッグ。ヒールは少し低め。あまり高いと謙也に追いついちゃうからね。いつも男物のウィッグをつけているけど、今日は久々に地毛でふわっと巻いて下ろしている。我ながら気合入ってるなぁと思う。

『後5分…謙也のことだから絶対10分前には来てるはず…待たせてるよね…』

小走りで駅前の最後の横断歩道を渡りあたりを見回す。時計台の下に見慣れた金色のひよこヘアーの人物がたっている。あれ絶対謙也だ。

『謙也っ!!ご、ごめん!』
「ええよ。俺も今来たとこ…ろ、や…」

振り返った謙也が目を見開く。あれ、なんかおかしかったかな?私のセンスだと結構いい線いってる方だったんだけど。

「お、おまっ…ほんまに綾崎か…?」
『は?いや、そうだけど。』
「女装似合いすぎやっちゅーか、ほんまもんの女の子みたいや…」

顔を真っ赤にしながらつぶやく謙也にこっちまで恥ずかしくなってくる。まあ、女の子みたいってか、本物の女の子なんですけどね。

『男相手にそれ言うか?女装似合うって褒め言葉でも何でもねえよ?』
「いや、まあせやけど…綾崎ほんまに女の子にしか見えへん…すごいなぁ!!」
『まあな!謙也のために頑張ったんだから、今日はしっかりリードしろよ?』
「お、おん!任しとき!!」

さり気なく道路側に立って手を引いて歩く謙也。確かに今日はいつものヘタレっぷりは出ていないようだ。

この時の私は謙也が耳まで真っ赤だったことに気づかなかった。そして、私を男だと思い込んでる謙也があらぬ方向へ恋心を抱きかけてることにも気づいてない。

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