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「女装して貰いたいねん!」

本日始まって早々、突然女装して欲しいと懇願してるく謙也。どうも謙也が嘘をついてしまったことが原因らしいのだが、それと女装が全く結びつかない。というわけで、謙也の回想シーン。


◇◇◇

丁度1週間前に遡る。
いつも通り、昼食を猛スピードで食べ終え中庭をフラフラしとった。

「あのっ!」

パッと学ランの裾を引っ張られ反射的に振り返った俺の前におったんは、目のクリっとしたツインテールの女の子やった。



『いいじゃん、カワイイ子じゃん。』
「まだ話の途中やっちゅーねん!」
『ごめんごめん。はい、続けて。』



多分身長は150前後やと思う。
じぃっと俺を見つめたまま動かへんねん。1分ちょいその格好のままやったから大丈夫なんか心配になって声かけたんや。

「大丈夫か?なんや、俺にようでもあるん?」
「あっ…」

パッと手を離し1度下を向いてもう一度俺に向き直った彼女。

「あの、私と付きおうてください!」
「……え?」

こ、告白ぅぅぅぅぅ?!まさかのここで告白。いや、まあそこまでは別に普通なんやけど…。

「いや、あの…すまん!俺、君とは付き合えへんわ」
「なんでですか?!」
「え、いや、なんでって…」
「好きな人とか秘密の彼女とかおるんですか?!」

なかなか引いてくれなさそうなすごい勢いで問い詰められて困った俺はしょうがなく嘘ついたんや。

「せ、せやねん。俺彼女おんねん。せやから、ごめんな?」
「っ…ほな、その彼女とデートしてるとこ見せてください!お似合いだと思ったら諦めます!!ええですよね?」
「えっ…」
「ほな、日曜日に駅前10時!絶対ですよ!」

そう言い残して彼女は消えてった……。



◇◇◇


「というわけやねん。」
『なんだそれ!どういうわけや!いもしない架空の彼女とデートでもすんのか?!』
「せやから綾崎に頼んどるやん!」
「なるほどな…。なんやおもろいやん。ええで、引き受けた。」
「よっしゃ!」
『いや待てなぜ白石が引き受ける、頼まれたの私なんですけどおい。謙也も喜ぶな!』
「まあまあ、俺に任しとき。プロデュースなら完璧やで。」

そういう問題じゃねぇ!つか私本来女だし!わざわざ男装してんのにここに来てそんな危険なことできるかよ!

「ほんま、一生のお願いやねん!」

何度も何度も頭を下げて懇願してる謙也。正直頭下げられるのは得意じゃないし、何より謙也のうるっとした瞳とかそういう真っ直ぐなところに私は弱い。引き受けてしまったらどれだけ危険なことか…。

『はぁ……しょーがねぇなぁ。わかった、引き受けるよ。』
「ほんまか!おおきに!!報酬は弾むで!」
『当たり前だ』

こうして私の危険な女装(ていうか女装じゃない元々女)の1日が幕を開けるのであった。

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