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『おーい、今日の練習は終了だー!』

今日でこの合宿も最後だ。他の学校はまだ練習してるが、大阪に帰らなければならない四天宝寺は一足先に合宿所を去ることになっている。思い返してみると長い合宿だった。逃走中に参加させられたり、そこでリョーマに私の正体がバレてしまったり、訳のわからない電話がかかってきたり、そのせいで集中できなかったり…。結局あの電話以来まだ何も起こっていないのが幸いだった。

「なあ、舞鈴。」
『ん?なんだ光?』
「………」

なんだ?やないっすわ、とでもいいたそうな顔をしている。わかる、わかるよ光。あんたが聞こうとしてることくらい見当がつく。でも、もし相談したら光のことだから、なんで俺に頼ってくれへんのですか、とか、俺が力貸します、とか言ってくるに違いない。それはダメなの、それじゃあ困るの。私の問題に、関係のない光たちを巻き込みたくない。

「舞鈴、俺に隠してること」
『ごめん、それ以上は言わないで。わかってる、光が言いたいこと。けど、言えないんだ。ごめん…』

ごめん光。心配してくれてるのはすっごく伝わってくる。それはとても嬉しいしありがたいの。ほんとは頼ってしまいたい、でも私が勝手に飛び出して引き起こした問題だから、私が解決するしかないんだ。

『……っ、それじゃあ四天宝寺帰ります!ありがとうございました!』
「ほな、跡部くん。ほんまおおきに。」
「ハッ、次合うときはもっと強くなった俺様を拝ませてやるぜ!」
「コーシーマーエー!今度は大阪で試合しようでぇー!」
「あんたがもっとおとなしくなったらね。」

ぞろぞろとバスに乗り込む部員を確認してからもう一度お礼を言ってバスに乗り込む。私の席は光のとなりなんだけど…

「どないしてん財前?なんや不機嫌やなぁ。」
「うっさいっすわ、謙也さんには関係あらへんでしょ。ほっといてください。」
「ひどっ!」
「まあまあ、ほっといたり謙也。財前やって虫の悪い時くらいあんねん。」

確実に私のせいですね。めっちゃ不機嫌オーラ漂ってるんですけど!そこまで?!そこまで不機嫌になるようなことだった?!確かに隠し事してるけど、でもそれは言いたくないんじゃなくて光を巻き込みたくないだけで…なんて、心の中でいくら叫んだって届くわけないか。もー、つくづく嫌になる。ここはもう寝るしかない。光の不機嫌オーラを気にしないようにも寝よう。

「なんや綾崎、疲れたんか?」
『んー、そーだな。ちょっと寝るわ。謙也も寝た方がいいだろ。ずーっとうるさかったし疲れてるだろ?』
「何いうとんねん!」

俺は全然疲れてへんし、ばりばり元気や!綾崎にも俺の元気をどーたらこーたらとか言ってる謙也の声を聞きながら、私は眠りについた。深くて長い眠りに…。

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