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『………ヤバい……』
「そっすね、ヤバイっすわ。」

迷子った!また見事に迷子に………。どうせこんなオチになるとは思っていたけど、流石に冷や汗が…。

「屋敷内で迷子になりますかね、普通。」
『悪いのは俺じゃない!俺は悪くねー!悪いのはこのだだっ広い屋敷だ!』
「はいはい、取り敢えず探しません?」
『あい………』

年下になだめられた………まあ、一年しか違わないんですけどね。
でもさ、やっぱ私不安だわ。明日からマネ業できるのかな?なんかさ、働く前に迷子になって助け呼んでそうだよね。
うわー!それってただの足手まといじゃん!一週間も足手まといにはなりたくない!

「何百面相してるんすか。行きますよ?」
『あぁ、ごめん。てか、行くってどこに?』

迷子の私たちがやたらめったら歩いていいのか?
いや、どう考えてもそれはダメでしょ。危険すぎる。

「そんな、やたらめったら歩くんとちゃいますわ。」
『あ、聞こえてました?』
「録画済みっすわ。」
『え?何で録画した?てか、録音から録画に昇格してね?あれ?このやり取り前もした?』
「さっきの仕返しっすわ。」

………してやられたり。でもさ、画像は撮る必要なくない?あるの?ないでしょ!
あー、ヤダ。………てか、結局この足はどこへ向かって動いてるの?

「ほらあそこ。氷帝の人たちっすわ。」
『あー、あれ氷帝なのか。』

うん、覚えてないわ。いや、さっきの数分じゃ無理無理覚えれるわけないでしょ!
これから徐々に覚えていくからいんですぅ!

「跡部さんに聞けば、すぐに分かるやないですか。」
『あぁ!そうだな、その手があったな!』

“偉いぞ光!”と言って頭撫でようとしたら避けられて、スカッて手が空を切った。
くそう、これが普段の運動量の差なのか!反射神経の差なのか!ちょっとくらい撫でたっていいじゃないか!

「ダメっすわ。手にワックスべったりついて気持ち悪なりますで?」
『うっ………やめとく………』

流石にベッタリはいやだなぁ………でも、風呂上りならさわれるでしょ!
狙うはその時だ!どうしても触りたいのだ!

「ん?何だテメーら………四天宝寺の財前と綾崎じゃねぇか。何の用だ、ア〜ン?」
『いや、それがですね。』
「道に迷ったんすわ。部長のおる部屋って、どう行けばええんですかね?」
「あー、それならここを右で…………………」
「どうも、ありがとうございます。」
『サンキュー!えぇっと……跡部!!!』
「フッ、まあいいだろう。」

うん、跡部ってナルシストかもしれない。でも、悪い人じゃないと思う!
なんか、意外に親切だし。まあ、金持ちでお坊ちゃんだから庶民の生活を知らないっていうのはすっごく伝わってくるけど。

「ちょお急いだ方がええかもしれませんね。」
『そうだな!』

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