14

『えぇ〜。本当に俺も行かなきゃいけねぇのか?』
「まあ、そういう規定やしな…」

帰り道。部活後の帰り道とか憧れていた気がする。
そんな憧れていた帰り道でさっきのトンデモ話の文句を言いまくる私は、夢をぶち壊している。
まあ、元はと言えば、白石が悪いのだけど。
急に合宿とか言われたってさ、正直え?って感じじゃない?

「でも、舞鈴がおってくれるんやったら俺、いつもよりも断然頑張れますわ。」
『よし行く!』

さっきまでの文句タラタラっぷりは何処へやら………。
いや、だってね?光が頑張れるって言ってるし?
そりゃ、行くしかないでしょ。うん、そうするしかないでしょ。

「ホンマか!そら良かったわ。恩に着るで、財前。」
「別にええですよ。その代わり、跡部さんに頼んどいて下さい。」
「ん?何や?」
「舞鈴と同室は絶対に俺にしたって下さい。て。」
『???』
「ま、しゃーないか。………頼んどいてやるわ。」
「ども。」

ん?なんだ?何の話ですか?
声が小さくてよく聞こえませんでしたけど。
うん、まあいっか☆

「ほな、俺は舞鈴と一緒に帰るんで。」
「さよか。ほな、また明日な。6時やで?」
「分かっとります。」
「じゃーなー!財前!綾崎ー!」
「謙也さん、うっさいっすわ。」
『おう、じゃーな!白石、謙也!』

謙也たちと逆方向へ歩く私たち。
うん、なんか、光と2人のときが一番落ち着く。
やっぱあれかな、正体知られてるし隠す必要がないっていうのが大きいのかな。
なんていうんだろう、安堵感を持たせてくれるっていうかなんというか。

「せや、舞鈴。」
『ん?なに?』
「一人暮らしなん?」
『あはは、違うよ。両親の家に住んでるの。』
「ふーん。……ほな、明日の朝、迎えに行ってもええ?」
『え?あー、うん。多分大丈夫!』
「ほな、5時40分くらいに迎えに行きますんで、支度しとって下さい。」
『うん!分かった!』

やったよー!憧れていたお迎え登校!
まあ、彼カノっていうシチュエーションじゃないことは置いといて。
一度やってみたかったんだよね!
朝迎えにきて、一緒に登校して………昇降口を並んで通るの!
まあ、私の場合は彼カノじゃないし、昇降口も“つかみの門”っていうイロモンだけど。
全然ロマンチックじゃないけど、やっぱ嬉しい。

「あ、せや。明日の合宿、マネってめっちゃ働かなアカンので、今日はゆっくり休んどいたほうがええですよ。」
『え、ほんと?』
「おん。合宿所広いんで、相当な距離移動するハズっすわ。」
『えー、やだなー………』
「頑張って下さい。舞鈴なら出来るハズっすわ。」
『うん!ありがとう、頑張るね!』
「おん。」

光って、一見無口で冷たくて近寄り難い感じがするけど、実はすっごく優しくて、人のこと考えてて気が利くんだよね。
口数が少ないのは、面倒っていうか、怠いっていうか………そういう意識からくるもので、決して悪い人ではないんだよね。
とにかく、そんな光が忠告してくれたんだし、今日は早く寝ようかな。

[]

[ 戻る ]