09

「俺は先輩らに用ないんで。他の人当たって下さい。」

ほんま、面倒くさい先輩らっすわ〜。
ホンマのこと言われたくらいで、そんなに気にすることあらへんやろ。

「さよか…ほんならしゃーない、他当ろか。ってちゃうわ!お前に用があんねん、財前。」

謙也さんのノリツッコミは、いつもに増してウザい気すんねんけど。
別にオモんないし、無理やりノラんでもええやろ。

『まあまあ。光は悪くないって。』
「そうですよ。」
「はぁ?!どう考えても財前悪いやろ!」
『いや、だから悪くねーって。俺が公平に判断してるんだから、間違いねぇよ。』
「どこがやねん!公平のカケラも感じられんわ!」

まあ、確かに謙也さんの言うとおり、公平さのカケラも感じられん気するけど。
せやけど、人に…舞鈴さんに庇ってもらえるんは嬉しい。

『だって、光は俺に話しただけで、二人が知ったのは、俺がついポロッと言っちまったからなんだし。本来なら知らないはずだったんだ。だから、光は悪くない。まあ、悪いのは俺だな、あはは!ってことで、この話は終了。苦情は受け付けません。悪しからず。』

いや、なんか、早速無理矢理っぽいっすけど。
事実なんは事実やけど、道理じゃないというか、筋が通ってへんっちゅーか…。

「はー、まあ、確かに綾崎くんが言うのも一理あるな。……しゃーない、今回は綾崎くんに免じて良しとするか。」

あ、いいんすか、ラッキー。
部長も変なところ納得しますよね。

「当たり前っすわ。『((バシッ!!!))』った!…なんすか、舞鈴さん。」
『礼はちゃんとしろ。はい、やり直し。』

は、叩かれた。
しかも、地味に痛いっちゅーオマケ付きや。
ちゅーか、そないなおまけいらんわ!

「チッ………どーも、ありがとうございますぅ。」
「ほんま、可愛げのない礼やなぁ。」

可愛げなくて悪かったっすね。
あいにく謙也さんとは違うて、ただで笑顔ばら撒くような人材じゃないんで。
俺の笑顔はどっかのファーストフード店みたいに「スマイル0円」なんちゅー安いもんやないのですわ。

「謙也さんほどじゃないっすわ。」
「せやけど、財前が初対面でこんなに懐いとるなんて、珍しいなぁ。」
「そうですか?」

まあ、初対面っちゅーか、TVでは毎日のように会ってるっちゅーか…。
せやけどまあ確かに、ここまで俺の気を惹いたんは舞鈴さんが初めてやな。
ま、舞鈴さんはそんなこと知らんでしょうから、どうせまた「私が芸能人だからだと思うけどね」とか思ってはるんでしょうけど。

『てか、次の授業何?』
「時間割、もらってへんのですか?」
「なんなら、俺の貸そか?」

はぁ?部長が貸すくらいなら、時間割が違うても俺の貸すわ。
ほんまやめてほしいっすわ〜。

「部長からは借りんといて下さい。変態がうつると困るんで。」
「なっ!」
「ほな、俺が貸したってもええでー?」

もっと無理や。
謙也さんは走って木にぶつかって気ぃ失ってて下さい。

「謙也さんはもっとやめてください。アホがうつったらどないすんねん。」
「酷っ!!!」
『ま、まあまあ。借りなくても大丈夫。そこに貼ってあるし。な?』

な?ってなんやねん、な?って!
めっちゃかわええんやけど。
まあ、素顔を知ってる俺やから、そんなこと思うのかもしれへんけど。
………って、何全員で赤なってんすか!
男装してても惚れそうって、ほんまどんだけ破壊力抜群やねん。
そないなところで女優魂とか出さなくてええですわ、ほんま。

『あれ?みんなどうしたんだ?』

しかも、まさかの無自覚とか、ありえへんわ…。
鈍感すぎるんにも程があるっちゅーねん、はぁ……。
っちゅーか、この二人いつまで赤なっとんねん。

「謙也さん、何赤くなってんすか。キモいんで、名前ん方向かんといて下さいっすわ。」
「残念やな、謙也。」
「そういう白石!自分やって赤いやろ!」
「俺はキモい言われてへんし。」
「あー、部長は変態っぽいんで、論外っすわ。」
『白石の方が酷い言われようじゃねーか、あはは!』

しまった……!
調子乗りすぎたか…?
一応年上やのに、思わず呼び捨てにしてもうた………ん?
あ、いや、気にする必要なかったっぽいな。

『ふふっ』

二人には聞こえてへんけど、俺には聞こえたで。
呼び捨てにされて喜んでるっちゅーんが。
ま、舞鈴は誰にも聞こえてへんて思うとるけどな。
せやけど、その顔は反則やで?
他の男どもの前でしたらあかん顔や、男装しててもホンマに惚れてまうわ。
冗談抜きで。

「あっ、ほなもう時間なんで。俺戻りますわ。先輩、舞鈴に何かしたら地獄みると思って下さい。」

ま、これくらい言うても大丈夫やろ。
罰は…当たらへんわ、きっと。

[]

[ 戻る ]