財前光


 
今日はホワイトデー。
男が女にバレンタインのお返しをする日。
 
でも今日は
私が財前にケーキを渡す日。
 
何故かバレンタインに財前から
家庭科で作ったマフィンをもらった。
だからお返しをくれといってきたのだ。
 
でも・・・
 
「ほんと・・・ありえないんやけど」
 
目の前には
真っ黒焦げのケーキ。
時計を見ると待ち合わせ時間まであと1時間。
 
「・・・1時間でケーキ作るとか無理だし・・・
 ・・・・・・・・あ!」
 
 
確か今日はユウジが小春ちゃんにケーキを作ってるはず!
 
 
 
 
「もしもしユウジ!!!」
「・・・なんやねん」
「ケーキ少しわけて!!」
「あ!?無理じゃアホ!」
「お願い!」
 
 
「・・・カップケーキでえぇか?」
「うん!今すぐ行く!」
 
もうこうなったらごまかすしかない!
うん、しょうがない。
 
 
 
 
「ユウジ!ケーキ!」
「ほら。どや?すごいやろ?」
 
見ると綺麗なラッピングされた
可愛らしいカップケーキが
机の上に広がっていた。
 
「うわ、やばい!すごいユウジ!」
「もってけアホー」
 
「ありがとう!今度お礼するから!」
 
ユウジは目を細めて
期待せんから
といって見送ってくれた。
 
 
 
待ち合わせ場所の公園につくと
もうそこには財前の姿があった。
 
「・・・待った?」
「遅いっすわ」
 
「・・・ごめん」
 
 
財前は無言で手をだしてくる
 
「はい、がっがんばったんだよ!」
「ふーん、」
 
相変わらず素っ気ない返事で
ケーキを食べる。
 
「・・・これホンマに蔵子先輩作った?」
 
「・・・うっうん。」
 
 
 
 
「嘘や。」
 
「・・・」
 
「ユウジ先輩やろ?」
「え・・・」
 
財前はため息ついて
ケーキを完食する。
 
「・・・ごめん財前、
 ケーキ黒焦げになっちゃって・・・
 とてもあげれる状態じゃなかったから」
 
 
「・・・食べたかった」
 
 
 
「え?」
 
 
  
「蔵子先輩作ったケーキ食べたかったわ」
 
 
ちょっとムスッとしている財前の姿が可愛くて
笑ってしまった。
 
 
「何笑ってんすか」
 
「財前かわいー」
 
「きもいっすわ」
 
「毒舌照れ屋ー」
 
「死んでください」
 
「本気で死んだらどうする?」
 
「・・・いや」
 
 
うつむく財前にまた可愛らしさを覚え
ちょっと可哀そうだなと思う
 
「・・・善哉食べにいこっか、奢る」
「・・・」
 
「もちろん、白玉つきで」
「生クリームも」
 
「わかったわかった」
 
財前の頭を撫でてやったら
顔が赤くなった。
 
「絶対・・・」
 
「え?」
 
 
「絶対・・・ケーキ作ってくださいよ?」
 
「うん、絶対作るわ」
 
 
 
甘い甘い善哉の上に
甘い甘い生クリーム。
それはまるで
今の私たちのようだったとさ、
 
 
 
 
 


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