第1話 IV

薄いバラ色の髪を風になびかせながら少女は不機嫌そうに窓の外を見ながら頬杖をつく。

しばらく馬車に揺れた所でふと室内に甘い匂いが漂ってきた。

「はい、シェイナ」

向かいに座る少年がお菓子を差し出してきた。

「・・・これは?」

「僕とクレークで焼いたんだ!どう?美味しい?」

少女は薄く微笑む。

「ああ、甘くて美味しいよ」

「そっか!良かった!!」

この少女が笑顔を見せるのは唯一この少年だけだ。

少女の名を、シェイナと言う。

その少女の隣で黒い帽子を深くかぶり、下を向いて座っているのがブレッド。

そして先ほどからのんきに微笑んでいる優男がクレーク・シャルロット。

その隣の少年がアシル・シャルロットだ。

シェイナはクレークに視線を向ける。

「路地裏で何者かにつけられた」

「見られた?まあ、隣国の軍服を着た少女なんて目立つよね」

ピクリとシェイナの眉が動く。

「お前が遅いから歩く羽目になったんじゃないか」

「いや、違うか。きみの姿を忘れたりなんてしないさ、この国の住民は。―――さて、着いたよ」

一際大きな屋敷の前で馬車は止まった。

ここは王都からかなり離れているため人通りも少ない。

馬車から降りるとクレークは一つ伸びをした。

「久しぶりの我が家って感じだね」

「そう・・・だな。ようやく、戻ってきた、この国に」

クレークが嬉しそうに言うと珍しくシェイナも頷いた。

「険しいのはこれからだよ。さて、僕らもそろそろ中に入ろうか?」

ゆっくりと首を巡らせて扉の方を見れば、アシルとブレッドはもう先におり、アシルが笑いながら手を振っていた。









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