V
―――広場の路地裏。
人気の全くない敷地内で不規則な銃声音が響く。
・・・といってもこの銃声が大通りに聞こえることはない。
「・・・・・・やはり少し重いな」
そう言って構え直す。
もう一発的を打とうと思ったら、頬の横を何かがかすめていった。
今まさに射ようとしていた的を玉が貫通していた。
「―――何の真似だ、ブレッド」
「・・・・・・迷いがあっては選択を誤るぞ」
シェイナはキッとブレッドを睨みつける。
「どういう意味だ?」
「そのままの意味だ。お前には迷いがある」
「―――何を今更迷うとお前は言うんだ?私が迷う?はっ、世迷い言を・・・」
ブレッドは静かにシェイナを見つめてきた。
やがて、彼は一度瞬きをすると踵を返した。
「・・・・・・戻ろう」
後ろで束ねた長い黒髪が揺れる。
それを見ながらシェイナはギリッと歯噛みする。
「・・・今更、何を迷うと言うんだっ!!」
そう言うと、カツカツというヒールの音を響かせながら苛立ちを露にシェイナは広場を去って行く。
シェイナが真っ直ぐ家の方へ向かうのを見て、ブレッドは細い林へ向かった。
しばらく歩くと小高い丘へと出た。
ここから見渡せば、この国が見える。
街も、城も。
城下から少し離れれば、そこは荒れ放題。
「・・・俺は、騎士だ。お前を守る盾だ」
遥か遠くを見ながらブレッドは己の拳を強く握りしめた。
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