05
「姫様たちが市へ行った日より一週間ほど前でしょうか。父からこの文が届いたのでございます」
文には早急に帰ってこいとだけ書いてあった。
だが、よねにはそれだけで十分だった。
それだけで全てを把握した。
「今、この里には私達しかおりません」
「えっ!?」
「里人が、みんな消えたのです」
あまりのことに舞姫は絶句したが、霜惺はさして驚いてはいない様だった。
「それは・・・」
「妖絡み、だね」
懐から扇を取り出すと、霜惺はそれを閉じたり開いたりしている。
それを横目で睨みつけながら舞姫は霜惺に問う。
「それで?」
「何が?」
本気でぽかんとする霜惺を睨みつけると舞姫はその背を叩いた。
「だから、妖怪を退治するんでしょう?」
「んー・・・そうだねぇ。でも、妖怪退治と決め付けるのはまだ早いかな」
「・・・どういうこと?」
「桜木の姫よ。本気で言っているのかい?」
先ほどまでとは打って変わって低い声音で問われて舞姫は思わず口を噤む。
そして霜惺はそんな舞姫を見て呆れた様にため息を吐いた。
「おそらく君は、青風という大妖怪と共にいた事によってこの程度のものには動じなくなってしまったのかもしれないね。本来、この山だけに限らず、山山には山を守る守り神がいると言われている」
「だから・・・!」
思わず舞姫が霜惺に掴みかかろうとしたその時、突如として部屋の戸が開いた。
「わっ・・・!?」
「えっ!?」
驚きつつも室内へ転がり込んで来た人物を見て、舞姫は目を見開いた。
「ててっ・・・あの野郎・・・」
悪態を吐きながらも痛む腹を押さえている人物に舞姫は釘付けになった。
嘘。
どうして。
だって、彼は今、都にいるはずで・・・―――。
「りゅう・・・さく・・・」
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