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三連休もおわり、学園に行く日になってしまった。
家に母と2人で残しておくなんて不安すぎるよ…!!


「いってきまーす」
「行ってらっしゃい」
「はやく帰ってきてくださいね!」
「いわれなくてもさハニー!」
「姉貴きめぇ」

まだご飯を食べているゆうきの頭にスリッパを投げて私は家を出た。


自転車にまたがり、目指すは学園。
遠いんだよなこれが。



なんてったて自転車で30分ですもん。


ともかく、今日の部活はまたサボらせていただこうではないか。



「おーい、なまえ!!」
「ん?あぁ、姫子!」
「おはよ、つかどうした?こんなに遅いの初めてじゃね?」
「そう?」
「そう」

自転車を飛ばしていれば後ろから聞こえてきたのは親友の声。
こいつは姫子。
一人称俺の癖にグラマーなけしからん奴だ。
いいぞもっとやれ。


「ははーん、まさか彼氏か」
「黙れ脳内年中発情期野郎」
「そこまで言うことなくね?」


なんて話していればいつの間にか学校へと到着。

よし、頑張るか。




教室にて、私は窓際の席に座る。
そうすれば双子のようにそっくりな2人が近づいてきた。
こいつら、双子の親を持つ従兄弟同士だ。

「おはよう」
「はよなまえ」
「おはよう雷蔵、三郎」
「俺にあいさつは?」
「いたの?」
「よしいい度胸だ三郎表でろ」

姫子に引きずられて三郎が教室の外に出てゆく。


「頑張って姫子」
「私には?!」
「程々に殴られてしまえ」
「まじでか!」


こうして私の学校生活は幕を開けるのだ。












お昼になる。
いつもはサボり願望の強い母の所為で学食だが、今日は違う。

なぜなら、そう。


イタちゃんが作ってくれたお弁当があるからだ!!

羨ましいか?そうだろうそうだろう。
存分に羨ましがれ!


「あれ?今日はなまえお弁当なんだ」
「そうなんだよ勘ちゃん!。可愛い可愛い遠縁の子が作ってくれたんだ!」

バレたらやばいだろうが今はそれよりもこの弁当を自慢したい。
こいつらは顔もよければ運動もできて、勉強もでき、そして、雷蔵と八を除く三郎、勘ちゃん、兵助は家事料理なんでもできるという欠点ないやつらだが、今日の私のように弁当を作ってくれる存在がいない。

まぁ、つくらないというのが正しいんだろうけど。
だってこいつら、お互いのお互いに対する依存が強すぎるんだ。



初めて見たときの感動は忘れられないね。



「っく、羨ましい!」
「ふははは!そうだろう三郎!」


どこから出したのかは知らないが、三郎がハンカチを噛んでいる。


「豆腐、ある?」
「こんな時にまで豆腐を催促しないでくれるかな兵助」
「いいからはやく見せろよ!」
「うっざ。姫子、八にグーパンチ!」
「よしきた」
「え、ご、ごめんて!」


じゃれあっている姫子と八を横目に私は作、イタちゃんの弁当を広げる。


「ふ、ふぉぉおおおお…っ」


思わず悶えてしまうくらい、可愛らしい弁当だった。
カラフルだねイタちゃん!
本当に君は色彩感覚が素晴らしいよ!



「っなんだこの弁当は!お前本当は彼女ができたんじゃないのか?!」
「本当だよ!なんなのこの可愛らしすぎるお弁当!ウインナーがウサギさんとか可愛すぎるよ!」
「ちょ、これは豆腐ハンバーグじゃないのか?!ひ、一口寄越せ!」
「ぅわぁぁあ、本当に美味しそうだねぇ。このデザート、貰っていい?」
「ミートボールにウインナーにハンバーグに…。う、羨ましい!」


三郎、雷蔵、兵助、勘ちゃん、八の順に叫ばれる。


「うるさいんだよこの愛情に飢えた獣共が!
これは男の子が作ったんだよ!
兵助!勘ちゃん、八!何一つ上げないからな!!」


弁当を抱え込み、声を張り上げる。

そういえば、イタちゃんはいつコンロやら豆腐やらの知識を得たんだろう。
お母さんかな。
あの人教えるのうまいし。


「男の子…?貴様、とうとうショタに走ったか!」
「地獄を見たいのか姫子!」


はっとしたような顔で私を見るな!





一人ひとり鎮めたあと、ようやく私はイタちゃんの作ってくれた弁当に口をつけることができたのだった。






◆◇◆◇

たまたま速く目が覚めたんだ。

お母さんに、今日からなまえお姉ちゃんはがっこう、というものに言ってしまうのだと言われた。

なんのことだろー、と思って首を傾げたら、お母さんはぼくの頭を撫でながら


「一日なまえお姉ちゃんに会えないんだよ」


と教えてくれました。


一日も会えないの?

そう考えて泣きそうになったら、お母さんは、

「イタちゃんは、お料理、好き?」

と聞いてきました。


こくりとうなずくと、

「そう、じゃぁなまえにお弁当を作ってあげましょうね」


と微笑みました。


おべんとう?
おべんとうってなんだろう。

またも首を傾げたぼくにお母さんはしかくい箱を持ってきて、あと、本も持ってきてくれました。




そして、がすこんろと、お弁当について教えてもらって、なまえお姉ちゃんとゆうきお兄ちゃんにお弁当をつくってあげることになったんだ!



なまえお姉ちゃん達の好きなものを教えてもらって、頑張って作って、お母さんに箱につめるのを手伝ってもらって。



起きたおねえちゃんたちにお弁当、持っていってね!って笑ったら、思い切り抱きしめられた。



「ありがとう!」
「まじか、ちょ、家宝にしたい」
「黙りなゆうき」


嬉しそうななまえお姉ちゃん達をみて、喜んでくれるなら明日もつくろうって、思いました!!








はやく、帰ってこないかなぁ。





そしたら、玄関で、おかえりなさい!っていうの!






◆◇◆◇


放課後。
遊びに行くという仲間の提案を蹴ってまでイタちゃんに会いたい一心で自転車を飛ばす。

今日のお弁当のお礼を言いたいからな!
勿論抱きしめて!


「うわぁぁあなまえの裏切り者ぉぉぉお!」
「今日は一緒にラウワンでセッションしてくれるって言ってたのにぃい!」
「すまんな兵助、勘ちゃん!私には今日何よりも優先せねばならぬものがある!」
「食満先輩も善法寺先輩も呼んだのに!」
「大変魅力的だが私にはもっと魅力的なものが家にいるのだ!」



背後から聞こえる罵詈雑言。
それらを無視し無心で自転車を漕いだおかげでなんと40分で家に到着。

愛って素晴らしいな!



「ただいま!」

喜び勇んで玄関の扉を開けて飛び込めば

「おかえりなさい!」
「イタちゃぁぁぁあん!」


満面の笑みのイタちゃんが両手を広げて待っていた。

迷わず飛び込んで抱きしめれば、にこりとイタちゃんが笑って抱きしめ返してくれる。




「只今イタちゃん、寂しかったでしょ」
「はい!でもお母さんがいてくれたので大丈夫です!」




抱き上げたままリビングへと向かえば、そこにはお母さんが

「いないし。」

いなかった。


「お母さんはついさっき出かけましたよ!」
「そっか、どこに?」
「お買い物です!」




にこにこと微笑みイタちゃんの頭を撫でれば、どこかそわそわとしだす。


「…イタちゃん、お弁当、美味しかったよ」
「!本当ですか!?」

嬉しそうに頬を赤く染めるイタちゃん。


うん。


「イタちゃん、私と結婚しよう」

「黙れks」

ばこっ


激しく揺さぶられる私の後頭部。

誰がやったかなんて考えずともわかる。


ゆうきしかいないからだ。





「イタちゃんと風呂はいるから貸せ」
「…あとで覚えてろよ」


イタちゃんをゆうきに渡した後、私は今日の献立を考えた。


「お母さんがいないなら適当に作って置かなきゃ」



お弁当を作らないだけで私だって料理はできるんだ。
…掃除はできないけれど。






「さーて。今日は…と」

冷蔵庫を覗き込み、今日の献立を考えた。










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