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「なまえさん、絵を描きたいです」
「ちょっと待ってて今絵の具と画用紙用意する」
可愛いイタちゃんの頼みを誰が断れるものか。
小学生以来使っていない絵の具を引っ張り出し、私御用達の画用紙を持っていく。
「水性だけど大丈夫?」
「平気だよ!我侭いってごめんなさい」
「イタちゃんの我侭なら大丈夫よ」
むしろもっと言ってくれ。
「きっとゆうきも聞いてくれるわよ」
「でも、悪いです…」
しゅんとする彼の頭をなでる。
「出ていいのは庭までだよ」
「はぁい!」
元気よく外に出たイタちゃんを見送り私は暖かい日差しに耐え切れず昼寝に入ってしまった。
「なまえさん!おきてください!」
「んぁ?」
目を開けたらイタちゃんの笑顔が目の前にあった。
「…おはよう」
「おはようございます!見てください!」
目の前に広げられたのは見事な夕焼けの水性画。
「すごい…」
自然と零れた言葉にイタちゃんが照れたように微笑む。
「夕焼けは、どの世界でも同じなんですね!」
その言葉に、ツキンと、胸が痛む。
「うん、そうだね」
「だから寂しくないです!」
え?
「どの世界でも夕焼けは同じで、朝日も同じ。
繋がってるんですから寂しいと思うことがおかしかったんですね!」
「いや、違う、それは違うだろ」
でもまぁ、イタちゃんが寂しくないならいいかな。
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