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朝目が覚めても隣にイタちゃんはいた。
可愛いな…
本当。
「イタちゃん、起きて。朝ごはん食べに行こう」
「ヴェ?」
「ふふ、寒いねぇ」
ゆっくりと瞼を持ち上げたあとにぶるりと身震いするイタちゃんに笑みを溢す。
こんなナリしてるけど本当は私達よりも生きてんだよね。
抱き上げて、リビングへと向かった。
リビングには既にお母さんはおきていて、朝食もできていた。
「お母さん、おはよ」
「おはようございます」
「おはようなまえ、イタちゃん」
私と弟は同じ学園高等部。
今日は振り替え休日。
まだ部屋で寝てるかな。
「イタちゃん、ゆうき起こしてきてもらえる?」
「はい!」
既にゆうきの部屋は教えてある。
イタちゃんに起こされたら流石のゆうきも一発でおきてくるでしょ。
「ふぉぉおおお!!イタちゃん?!」
ほらね。
全員そろって、両手を合わせていただきます。
「今日はイタちゃんの日用品買いに行くけどゆうきどうする?」
「は?行くに決まってんじゃん」
「流石だよこの子供好き」
「じゃぁ、今日は皆さんでお出かけ?嬉しいなぁっ」
「お父さんはいないけどね」
よし。
とりあえず写メかな
お母さんの運転でデパートへと向かう。
まぁイトー●ーカドーですよ。
「す、すごいですぅうう!」
「ちょ、顔出すな!」
窓の外から顔を出しているイタちゃんをゆうきがあわてて引き戻す。
「すごいですね!文明ってすごいです!」
「喜んでいるのはわかったから、顔を出すな!」
目をきらきらとさせているイタちゃんには何を言っても無駄なようだ。
さて、まぁもうすぐ着くし。
ついたら、イタちゃんを抱えながらゆうきが降り、その後ろから続いて降りる。
とりあえずはイタちゃんの服を見に行かなきゃね。
カートを押しながら子供服売り場に向かう。
イタちゃんは相変わらずゆうきの腕の中だ。
うらやましいな、そこかわれよチクショー。
「わぁ、人がいっぱい!」
「まぁ、所謂市場だからね」
「ふわぁぁああっ。なんだか動いてる段差があるよ?」
「あぁ、あれはエスカレーターっつてな…」
「服売り場ついたぞカスイタちゃんよこせ」
「ってやめろよ姉貴!」
ゆうきの腕の中からイタちゃんを取り返す。
そしてそのまま服を物色し始めた。
「これなんて可愛いじゃないの?」
「お母さん…イタちゃんは男の子だよ…」
「えぇ?!でも可愛いからありね!」
「それでこそ私のお母さんね」
お母さんの持ってきた女の子向けの服をカゴに入れ、ゆうきの持ってきた服もみる。
例に洩れずフリフリですねわかります。
しょうがないから私は男の子向けの服を数着チョイスした。
それをレジへと持っていく母を見送り、私達はぶらぶらと適当に見て回る。
と、声をかけられた。
「なまえ先輩にゆうき先輩じゃないですか!家族で出かけるってここだったのか?」
「…鬼道?」
「あ!本当だ!てかその腕に抱えてる子誰?」
「それに佐久間か」
ドレッドヘアーの髪型にゴーグルをつけた子が眼帯を眼帯をつけた子とともに駆け寄ってきた。
私とゆうきの後輩のサッカー部員達だ。
ゆうきはこいつらと遊ぶ約束をしていたのか。
「お久しぶりですなまえ先輩!」
「うん。久しぶり。元気そうだね」
ぱぁあと笑顔を輝かす佐久間の頭を片手で撫でると、イタちゃんがキョト、と首を傾げながら問いかけてくる。
「お知り合いですか?」
「後輩だよ」
頭を撫でて微笑めば、佐久間がムッとしながら私の手をつかんだ。
「もっと撫でててくださいよ!久しぶりに会ったんですから!」
「…#NAME1##さんの手は僕を撫でるためにあるんです」
…どういうこと?
何この状況。
助けを求めるように私はゆうきと鬼道を見る。
「はぁ…佐久間、やめろ。なまえ先輩が困っている」
「イタちゃんもなー。ほら、一旦俺のとこおいで」
ずるずると引かれた佐久間に取り上げられたイタちゃん。
なんとなく手持ち無沙汰になって鬼道を抱きしめてみる。
「―――!!!」
「あれ、真っ赤だねぇ」
「姉貴なにやってんの?!」
「鬼道さんずるい!なまえ先輩俺も俺も!」
佐久間も纏めてぎゅうと抱きしめる。
「あ!いたいた。お母さんこれから食材買いに行くからあんたたち好きなところに行ってていいわよ。終わったら連絡するから」
お母さんの言葉に佐久間が目の色を変えた。
「先輩!ゲーセン行きましょ!」
「あ、いいねー。お姉さん音ゲー頑張っちゃうよ?」
ぐいぐいと引きずられてデパートの付属のゲームセンターへと向かう。
「俺様の美技に酔いな!」
「きゃーなまえ先輩かっこいー」
「棒読み乙ww」
コナ●カードを入れてパスワード入力。
ふふ、これでも私は音ゲーが得意なのだよ!
一通り楽しんだ後、お母さんから連絡が入る。
「あ、連絡きた。
ごめんね鬼道、佐久間。帰らなきゃ」
「はぁい!また会いましょうね!」
「おい、俺には何にも無しかコラ」
車に乗り込んだら、イタちゃんが目も合わせてくれなかった。
「(ツーン)」
「え、い、イタちゃん?私なんかした?」
おろおろとすれば弟が呆れたように呟く。
「イタちゃんは寂しかったんだよ」
「え?」
「いくら久しぶりの後輩だからってイタちゃん放置すんなよな」
……ナニソレ可愛い。
「ごめんね、イタちゃん」
「…しょうがないから許してあげます」
ぷーと膨れたイタちゃんのほっぺは柔らかかったです。
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