report4


先に入って行ったアブソルを追って、
斎も発電所に入って行った。

発電所の中は朝だというのに、薄暗くて人気ない感じのせいか、寂れて見える。

人がいるはずなのに、人の気配が気味が悪いほど感じられないなんておかしいことだ。


「誰かいますか?」


声がエコーしてきこえる。
もちろん、誰も返事を返す者はいない。

いつの間にか、先を歩いていたはずのアブソルが斎にぴったりとくっついて歩いている。


「アブソル…まさか怖いの?」


アブソルは斎の顔を見ると、パッと先にまた進んで行った。


「そんなに意地を張らなくていいのに」と、言って斎もすぐ
アブソルの後ろについていく。

そのまま斎はアブソルの後ろについていたのだが、突然アブソルは足を止めてジッと何かを凝視しだした。
明かりがともっている。



「もう!いつになったら明かりが戻るのよ!」

「はて、機械を勝手にいじって発電所の電気をおとしたのは誰だったかの…?」

「悪かったわね…とっとと仕事すれば!」



明かりの方からそんなやりとりが聞こえてきた。
アブソルが斎の方へ振り返る。


「先手必勝だよ。」


斎のその言葉を合図に、アブソルが明かりの中に飛び込んだ。
中で騒動が起きて、想像していたよりも早くアブソルが戻ってきた。
誰かと一緒だ。


「早く逃げましょう。面倒臭いから。」

おそらくこの人があの女の子の父親だろう。

「えーと、君は誰だい?」

「今はそんな自己紹介の時間は無いですよ。ほら。」


後ろを見ると赤い髪の女が、そうとう怒った様子で走ってきていた。


「早く逃げてください。…一人なら相手できるので、大丈夫ですよ。」


なかなか逃げようとしない女の子の父親は「外でお子さんが待ってますよ」と斎が言うと、
急に子供が心配になったようで「すまない」と言ってようやく走り出した。

その事を斎はちゃんと確認すると、赤い髪の女に向き合った。


「待っててくれたんだ?」

「別にあんたを気遣って待ってたわけじゃないのよ。追いかける必要が無くなっただけ。
   それに、わたしを邪魔したあんたは残ったし、思い知らせるには十分でしょ。」

「…そうだね、確かに。」

「じゃあ始めましょ。わたしはギンガ団の幹部のマーズ。
   覚えておけば? 一生忘れられない名前になるわよ。」

「聞いてないです。」



「…ブニャット! 猫だまし!」


マーズの手からボールが放たれてブニャットが現れ、アブソルに攻撃をしかけた。
アブソルは毛が一瞬の内に逆立って、体が固まった。
どう見ても相手の先制攻撃にひるんでいる。


「アブソル、いつまでひるんでるつもり?しっかりして。」


斎がそう声をかけるとアブソルは我に返って、敵の姿をしっかりその目に捉えた。
ブニャットは追撃しようとその大きな体躯で突進してきてる。

「ふいうち。」

咄嗟の支持を聞き漏らさずアブソルはふいうちでブニャットを迎え撃った。
反撃が来るとは予想していなかったのかブニャットは後退する。


と、突然アブソルとブニャットの間に何かが飛んできた。

空き缶に見えるゴミのようなそれは床に落ちてコロコロと転がると、
隙間からおびただしい量の煙を噴出した。

「何よこれ!」マーズが驚きの声をあげる。

マーズが驚いているのがわかると、斎はアブソルに指示を出した。

「今だアブソル。あいつが持ってる明かり壊してあげて。」

発電所内は未だ真っ暗。
アブソルの角の一撃でマーズの持っていた眩しくて邪魔な懐中電灯は大破した。
そのおかげで光源ががなくなって何も見えない。


「斎くん!」

背後から聞き覚えのある声が。
斎はしばらく前に会ったあの人だと分かった。

「ハンサムさんですか?」

「ああ。あいつの視界が戻る前にここから離れよう。」



「暗闇に隠れながら攻撃してくるつもりね? 返り討ちにしてやるわ!」
と言って攻撃に備えているマーズのことを考えると少し可哀そうな気もするが。
斎は長期戦になるのが嫌なので、暗闇に隠れながらハンサムとその場を後にした。

完全な勘違いだと気づくことができるのに時間がかかって、
結局マーズは斎を逃がしてしまった。






後書き

次はハクタイ
ハクタイといえばギンガ団のアジト
ときたら?



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