Dem2


実写2 エキサイティン拉致された後




突然浮遊感が襲った。車は宙に放り出されて車体を傾けながら地面へ落下していった。ボンネットから落ちてエアーバッグが発動したお陰で死にはしなかったが、それでもいい気分なはずもない。車は動きを止めたかに思えたが、今度は車を真っ二つにするように鋭利な刃物が侵入してきた。金属を切り裂く嫌な音が狭い車の中に響いて、その音が止んだ時には車は真っ二つ。左右に別れた車の中から私は慌てて飛びだした。レオもまだ歩く元気があったのか飛び出してくる。

車の外はホコリ気のある廃れた工事のようだ。いや、そんなことはすぐにどうでもよくなった。ここが何処かなんて些細な問題。目の前にいる赤い目をしたロボットを見れば誰でもそう思う。

目の前の底意地の悪そうな顔のエイリアン、スタースクリームは威嚇をしてくるように顔を近づけてきた。口からは人間で言うヨダレのようにオイルを垂らして、それを飛ばしてくる。それに不快感は感じたものの、他にスタースクリームが自分に危害を与えてくる様子はない。すくなくとも、いきなり首をもぎ取られるような雰囲気は無かった。先の戦いでディセプティコンが負けた理由を作ったのは私なのだからスタースクリームに恨まれていても当然なのだが、妙に大人しいスタースクリームに違和感を感じた。

そこからちらりと見えるレオは顔面蒼白で今にも失神してしまいそうに震えていた。本当だったら私もパニックの一つくらい起こしたいところだが、ここまで怖がっているレオを見ていると逆に落ち着いてくるというものだ。

他にディセプティコンがいないなら、レオを逃がす事ぐらいはできるかもしれないと思った矢先、背後の空気が大きく動く気配がした。

下の階から現れた大きな影を見て驚いた。まさか、自分が殺した相手にまた会うことになるなんて思ってもみなかったから。メガトロンは赤い光の灯った目で私を睨んでいた。

〈こっちへこい、小娘〉

なぜ蘇ることができたのやら。金属生命体はしぶといらしい。

どうしたものかと、ちらとレオの方へ視線を向けるとスタースクリームが腕のミサイルをレオに向ける仕草をした。言う事を聞かないとレオを撃つぞという脅しだ。私のような民間人相手に人質なんて大袈裟に思う。

「私みたいな武器も何も持ってない虫けら相手に人質をとるつもり?」

〈おまえは油断ならない〉

メガトロンは私が小さい人間だからと油断をする気は無いらしい。とても理性的な判断だ。こちらにとっては有り難くないことだけど。

横のボロボロな階段を1歩づつ降りていく。

「逃げないから。お願いだからレオは開放して…」

〈黙れ〉

その時メガトロンの大きな鉤爪が私を掴んで宙に放り投げた。落ちた場所は固くて身体を強く打ちつけて、その痛みに息が詰まってとてもすぐには起き上がれなかった。

痛みが引いて身体を起こそうとしたけど、その前に上からメガトロンの指が伸びてきて床に押さえつえられた。両手を挟まれて身動きが取れない。

〈おまえの肉を掴むのは気分がいい〉

何か使えるものは無いかと視線を動かしていたが、上から投げかけられた言葉にゆっくり視線を持ち上げた。視界に鮮烈な赤い目と視線が交差する。

唾を飲み込んで恐る恐る聞いてみる。

「私を殺すつもり?」

〈そうだ〉

「そりゃ、そうだよね」

落胆した。分かり切った事だから驚きはしない。

我ながら馬鹿なことを聞いてしまったと思った。機械の巨大な異星人が自分に会いに来る理由なんて仕返し以外に考えられない。

「なら早く殺して欲しい」

〈残念だがその要望には答えられない。貴様には人質になってもらう。オートボットを滅ぼしたら最後にゆっくり時間をかけて殺してやろう〉

私が人質になることで些細でもオプティマスの迷惑になるような事があるのは嫌だ。

「なら、私は天寿を全うして死ぬことになるかな。だってオプティマスはあんたなんかに負けないもの」

これは挑発だ。このまま人質になってオプティマスの足を引っ張り、そのまま嬲り殺しにされるような情けない死に様は嫌だった。この挑発に乗っかりメガトロンが怒りに任せて自分を殺してくれれば万々歳……なのだが、やはりそう上手くはいかない。

〈その手には乗らん〉

メガトロンは至って冷静だ。やはり矮小な人間がキャンキャン騒いだところで無駄ということか。

〈貴様をそう容易く死なせるものか。絶対にな。あの時、俺様の誘いに承諾しなかったことを必ず後悔させてやる〉

そんなこともあったか。ペットにしてやる云々の話は本気で言っていたらしいのには驚きだ。

それにしても自分に人質としての価値があるのだろうかと疑問に思う。オートボットと私の命を天秤にかけたらオプティマスならオートボットを優先する気がする。それにオプティマスは最近私を遠ざけようとしている。

「言っておくけど命乞いなんかしないからね。それに、私に人質の価値なんて無いんだから。あんたの思い通りにはならないから」

〈貴様はオプティマスのことを何も分かっていない。あいつは必ずオートボットも貴様も両方を救う道を探すだろう。そして両方失うことになる〉

「そんなことにはならない。あんたに私たちの何が分かるっていうの?」

〈理解しているとも。貴様をずっと見張らせていたからな〉

「……え?」

これにはショックを隠せなかった。驚いて反応ができず固まってしまった。

〈貴様は孤独だ。肉親もいなければ心を許す友もいない。唯一といえる仲間にも遠ざけられ軋轢が生じている。俺様なら貴様を煩わせることなどなかった〉

「何言ってるの……?」

何かとんでもないことを言わなかったか?そう自分の耳を疑った時、自分の首がジワジワと締め付けられるのを感じた。

〈干渉に浸る時間は悪いが与えられない。貴様にはこれからちょっとした仕事をしてもらわなくては。なに、寝ている間に終わる〉

視界が暗くなってきた。耳にラップがかかってるように音を上手く拾えない。このまま意識を失ってしまったらもう二度と目を覚ますことができない気がする。けれどそれに抗えるはずもなく、ストンと寝るように意識が飛んでしまった。


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