Lonsdaleite01


アイスマン計画、キューブ、セクター7思いつく限りの単語を調べてみたがなんのヒットもなかった。斎は考える。もしこれらの存在が本当にあるとしたら、非常に重い情報規制がかかっていることになる。だとしたら自分が規制対象の"何か"を探しているのに気付く人物が必ずいる筈だ。それは時間が経たないと分からないから今は待つしかない。

ハッキングするにもハッキング相手が必要だし、その相手が存在するのかすら不明という現状ではお手上げ状態。だけど、そんな状態にも収穫はあった。斎の高祖母、アレンは確かに北極へ行っていた。北極へ最初に上陸した探検隊の1人として名を残していたのだ。手記によれば、アイスマンを見つけたのはアーチボルト・ウィトウィッキーというらしい。彼はもうこの世にはいないがその祖先はまだ生きている。何か手掛かりがあるかもしれない。都合のいいことに近所だったこともいい事に、斎はウィトウィッキー家へ向かうのだった。


ウィトウィッキー家に着いたが、あいにく夫妻は不在でサムという一人息子とモージョという小型犬だけがいた。斎が自分の祖先の事を調べていて、その祖先がアーチボルトと親しかったらしいから話を聞きたいと言えば、サムは快く了解してくれた。

「アーチボルトは僕の曾曾祖父なんだ。だから1回も会ったことは無いんだけど、両親が言うにはイカレてたらしい」

「イカレて?」

「うん。北極に初めて上陸したのが曾曾祖父だったらしいんだけど、その時失明して頭もおかしくなって精神病院行きになったようだよ」

「へえ。それはおもしろ‥‥大変そうだね」

アーチボルトが失明したのは手記に書いてあったから知っている。だが彼が精神病院に収監されていた事は知らなかった。アレンとアーチボルトの精神が病んでいたのはエイリアンと接触したからなのか。疑問は解消されない。

「僕もこれぐらいか知らないんだけど‥‥良かったら家にあがる?曾曾祖父が遺したものがあるんだけど」

「もちろん」

サムの案内で二階へ向かったのだが、彼は扉の前でピタリと止まった。

「ごめん、ちょっとだけ待っててくれる?」

そう言うと忙しなく部屋の中へ入っていった。部屋の中ではバタバタと音が聞こえる。そういうお年頃なのだから見られて困るものでも隠しているのだろう。と、斎は大人しく待っていた。

しばらくしてサムが扉を開けてひょっこり顔を出した。

「最近掃除する暇がなくて‥‥どうぞ入って」

言い訳がましいことを言うサム。

「どうして祖先の事を調べてるの?」

「大学のレポートで祖先について調べる必要があってね」

「そうなんだ、真面目なんだね。ほら、ここに入ってるのすべて遺品だよ」

そういってサムがダンボール箱を開いた。中には地図に羅針盤、メガネその他もろもろ。探検家らしい遺品だ。特に気になるものは見つからない。

「んーこれだけでは何とも言えないかな」

「まあ、そうだよね。力になれなくてごめん」

「そんな事ないよ。アーチボルトが頭おかしくなったのは知らなかったから、新発見もあったし‥‥またくるね。今度はご両親に話を聞きたいな」


自宅へ帰ると家の前に黒い車が止まっていた。その様子を見て斎は心の中でガッツポーズをした。巻いた餌に魚が食いついたようだ。近づくと、さらに背後から別の車が徐行してやってきた。車から出てきたのはスーツを着た男達で、斎はいかにもそれっぽいと心の中で笑った。

「君は斎・ロンズデーライトだな。わたしはシーモア・シモンズ。セクター7の捜査官だ。おとなしく同行してもらおうか」

「ご丁寧にどうも」

斎は言われたとおり大人しく同行した。これこそ斎が望んだ結果だし、逃げる必要性も感じないからだ。だが車のなかで恰幅の良い黒ずくめの男二人に挟まれるのは嫌だった。

車の走行中にシモンズは斎に話しかけた。

「1つ聞きたいことがある。我々のことをどこで知った?」

「わかるでしょ?」

と、斎はアレンの手帳を振った。それをバックミラー越しにシモンズは見る。

「おまえがアレンの子孫なのは知っていた。それにしても、インターネットで検索をかけるとは些か頭が悪かったな」

「それはどうかな。そちらさんが気づいてくれたおかげでこうして迎えが来たんだからね。こちらから探す必要が無くなって私としては御の字だよ」

もし、仮にセクター7が存在してるとしたらネットになんの情報が無いのはおかしい。なら情報を操作してると斎は考えた。だから検索でもしようものなら、すぐさま情報規制に引っかかって相手から接触してくるんじゃないかと。じゃなかったら何の対策もしないで検索なんてしない。軽い気持ちで釣り糸を垂らしたら予想以上の大物が釣れた。

「おかげでこの手帳の内容が真実だって分かったんだから」

シモンズはしばらく黙った。

「で、どこに行くの」

「フーバーダムだ」

フーバーダムというと、アレンが働いていたセクター7の隠れ蓑だ。アイスマンもといNBE-1とキューブがあると手記に書いてあった場所に行けるとなって、斎はテンションがあがってしまった。

「マジで!!やりぃ!!!!」

「おい、車の中ではしゃぐな!」


*prevnext#
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -