report8


ハクタイでの一件の後、ジュンと斎は自転車屋の主人に自転車を貸してもらい、サイクリングロードを抜けた。

坂を下るだけの道なのにも関わらず、サイクリングロードには勝負を仕掛けてくるトレーナーが沢山いて汗を思いの外かいた。

サイクリンロード南口には休憩所が設けられていて浴場もあると聞いて、斎とジュンはさっそく各々汗を洗い流しにいっていた。



浴場の正面は一面ガラス張りになっていて、シンオウ地方を両断するテンガン山を臨めた。

斎は温泉に浸かりながら眺める。

この休憩が終わったら今度はあのテンガン山を越えてその先の町ヨスガに向かうことになる。
その間は満足にお風呂も入れないし野宿になることを考えると、斎はこのままずっと温泉に浸かっていたい気持ちもした。

ジュンがうるさいだろうから何も言わないけど。


ゆっくり考え事をするのに入浴時間はぴったりだ。
今は邪魔する人もいない。

斎はハクタイで起こった色んなことを考えた。
真っ先に浮かんだのはアカギというあの男。

あの男は何となく近寄りがたい。
何故自分に仲間になれという条件を突きつけた?
ただの気まぐれにしても変というか、何か裏があるようで。
『父親の知友』とも言っていたが、それも怪しい。

その一方で名乗る前から名前を知られていたのを考えると、前に会ったことがあるのは真実だと斎は認めざるをえなかった。


それに、アカギの統制するギンガ団とかいう怪しい集団のことも。
あの時はジュンが突っ走って行ってしまったからしょうがないけど、斎は極力関わりたくないと思った。



のぼせる前に温泉から上がるとジュンが待ってるだろう休憩所に向かった。
せっかちなジュンのことだからとっくに温泉から上がって待ってるだろう。

休憩所に着くと案の定ジュンは先に待っていて、他のサイクリング客と勝負をしていた。


「温泉に入ったばかりなのに、また汗かくようなことして…。」

「斎が遅いからだろ。そんなことよりほら、一緒にバトルするぞ。タッグ!」

「そんな急に言われても。今アブソルもいないし。」

「いんじゃん。」ジュンが斎の後ろを指さす。

斎が振り返るとずっとそこにいたみたいにアブソルは座っていた。

「あれ、ほんとうだ。」

さっきまで散歩してたくせにタイミング良すぎだと、斎はアブソルを指の先で突っついた。

「これでバトルできるな!」

「…うん。」




それから何回か斎はジュンとのタッグに付き合わされて闘った。
何気に白熱した戦いを見せて、ポケモンバトルも悪くはないなと少し思った。


そしてまた二人は次の町を目指して出発した。
サイクリングロードを抜けた先には分かれ道があり、片方はクロガネシティへ、そしてもう片方はテンガン山へと続いている。

「この先がクロガネシティか…。」ジュンはそう言って数歩進み「あ、」と何か思い出したように立ち止まった。

「俺クロガネジム行かなきゃ。」

ジュンはハクタイまで斎を追いかけていたから、クロガネに立ち寄っていなかったのだ。


「それなら一緒に行くよ。」

「別にいいけど斎は先にヨスガに向かった方がいいんじゃないか?
    おまえ足遅いし。クロガネに寄り道しても余裕で追いつくぞ。」

「うーん。その方がいい…かな?じゃあ私先にテンガン山行くから。後でね。」

「ああ!」


そうしてテンガン山の麓まできてジュンと別れてしまったのだけど、斎は特に旅に急いでるわけでもなく。

「そういえば、アブソルはテンガン山が故郷…なんだっけ?」


黙って前に歩き出したアブソルを見てそうかと納得した。

アブソルとは記憶が無くなる前から一緒にいるから、出会った経緯とかは分からない。
けど、野生のアブソルはテンガン山付近に生息しているのは知っていた。


「じゃあ案内よろしくね。」






後書き

とても久しぶりの更新ですがよしなにー。
そうこうしてるうちにポケスペももうBW2編突入…



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