忍少年と一期一会 06


興味がないくせに、世話をする。

警戒するくせに、近づいてくる。

好意的ではないだろうに、親しげだ。

―――理解が出来ない

何を考えているのか、それを想定する事ができない。

そう。分からない。

いつもなら巧みにその腹の内を暴いてやるのに、覗いてもそこには暗闇しか無い。

何も、見えないのだ。

だからこそ、おっかない。

何故助けた。何故近づく。何故、何故―――

簡単に隣で眠る『それ』を観察しながら、いつまでも考える。

あれだけ警戒させたのに、何故そう簡単に無防備を晒すのか。
猫だって眠るときは腹を見せずに眠るぞ。これではまるで家猫だ。

それとも、『俺』は警戒するに値しないとでも言うのか。―――可能性はある。

しかし、『危険』だという事をあの男はよく分かっていたはずなのに、何故―――

何故、警戒心を解いた?

分る筈もない事について、何故何故とそればかりが頭を占める自分に腹が立つ。

それこそ何故そこまで真剣になって、『それ』に拘らなければいけない?

『俺』が奴のそばにいる理由なんて大した疑問じゃないだろう?

……そうだ、大した疑問じゃない。

ふいに口元に手をやると、『俺』が笑っていた。

ああ、そうか。

やっと気がついて、本当に笑ってしまう。

アホさ加減に、馬鹿らしさ加減に。

嘘だろ、この『俺』がか。あの短い間にか?……もっとよく考えろ。距離を置き、冷静になれ。
しかし、込み上げる激情が、考える脳を焼きつくし、理性を拒絶する。
本能にも似た感情に、抗いなどできない。

『俺』にもまだ可愛げがあったという訳か……。
今だ呆け顔を晒す顔を見て、悪戯心に心が躍った。
己の元へ引き堕とすように、その体を捕まえる。

気づけばさぞや驚くだろうに。

覆いかぶさるように抱きしめると、意外にもその暖かさが心地良い。

ふと息を吐き出せば、気が抜けたかのようにまた笑みが零れた。

それは自嘲。

どこかで喰えと、空腹だ、旨そうだ、と叫ぶ。

それなのに、手を出さずにいる。

なんて茶番だ。

笑えるはずもない、冗談にもならない茶番劇。

……全てはこの熱のせいにしよう。

なんて事は無い、これはただの青春だ。

しばらくの間ぐらい、分りきっている事を否定して、誤魔化したって問題ないだろう。

こんな風に人を抱きしめる理由など、今は知りたくない。

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