忍少年と隠忍自重 058
相手に気を配りながら戦闘不能にさせるのは、息の根を止めるより骨が折れる。
浅い攻撃だと復活するかもしれないし、深い攻撃だと殺してしまう。―――配慮が難しい。
しかも、雑魚とはいえ敵が多ければ多いほど余裕も無くなるから、油断すると自分が怪我を負ってしまう。
小さな蟻の触角を引き抜くより、足で踏みつぶしてしまった方が明らかに楽だとつくづく思う。
けれどもう、小さな針に糸を通すような、繊細な配慮をする必要はなくなった。
―――なんせ、か弱い『人質達』はようやくいなくなったのだから。
一般人は思ったより心が弱い。
血をちょっと見ただけでも、ナイフを振りかざしただけでも血相を変える。
殺すなどもっての外――― 一度斬りつければそれだけで『殺人鬼』だ。
忍は彼らに…空達にそんな目で見られるのは都合が悪かった。
残酷な光景は、あの子達の心も傷つけるし、忍だって後味が悪い。
だからこそ、なるべく『常識』の範囲ギリギリを守りながら、使いなれない玩具(スタンガン)だって使った。
―――本当は、使わずして倒す術を、忍は熟知しているのに…
けれどあの時は、敵を迅速に排除する事より、彼らを『守る』事が最善だったのだ。
今はもう何も遠慮をする必要はない―――何一つ…
あとはもう…
―――何も残さないほど、壊せばいい
そうして散らかした『もの』は最終的に、その手の請負人に引き渡しせば、あとは綺麗さっぱり『なくなる』。
これで
めでたしめでたし。
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