忍少年と隠忍自重 046


「立て!!」

元<ゲン>が藤堂にそう命令する。
藤堂はその通り、ゆっくりと立ち上がった。

元<ゲン>が慎重に歩き出すと、律<リツ>が動く事を惜しむ空<ソラ>に声をかけた。

「空<ソラ>先輩…行きましょう」

空<ソラ>は何かを逡巡して考えているようだった。
しかし、やがて弱々しい眼に、力強い光が生まれた。
忍のコートを指先で落ちないようにぎゅっと掴むと、そのまま自らの足で、空<ソラ>は忍に背を向けて歩き出す。
律<リツ>も健太を支えながら、一歩を踏んだ。
その姿を、忍と男達が見守る。

だが、こんなにあっさりと逃してくれるような―――そんな男達ではなかった。

元<ゲン>達がちょうど工場のど真ん中―――男達のいる群れに差し掛かった時だ。
男達と元<ゲン>達の距離は大凡、走らないと距離が縮まらないほど離れている。
藤堂の首筋にナイフを突き付けながら歩いていた元<ゲン>は、十分警戒しながらもその距離に、少し安心していた。
それに相手の目的が忍であると分かっていたし、はっきり言って自分達は無関係の無害なのだから、連中がわざわざ留めるほどの価値など自分達にないと自覚していた。

だからきっと見逃してくれる―――そうに違いない。

ここを出たらこの糞みたいな工場地帯を出て、藤堂を連れて警察へ逃げ込むのだ。
出口が近付くにつれて、その希望も大きくなっていった。

―――上手くいく。きっと…上手くいく。

元<ゲン>が男達から目を離し、出口の扉を見た瞬間だった。

男達の目の色が、変わった。

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