忍少年と隠忍自重 037


工場内に、轟音が響いた。
じっと睥睨する先―――工場内の扉を開けて、男が二人入って来た。
朝倉を探しに出て行った男と、そしてもう一人は・・・

「お。連れて来たか…」

忍はすっと目を細める。
目元を和ませて、奇妙な笑みを浮かべている―――朝倉だった。

「そうだよ…。今彼に会わせてあげるね」

片手に携帯を握り、誰かの通話しながら、忍の方へゆっくり歩いてくる。
朝倉が忍に向かって近づく中、一緒にいた男は早々に男達の集まるテーブルに駆け寄った。
朝倉の邪魔にならないよう、声を潜ませながら、

「おいっ。聞いて驚けよ!!なんと―――アイツから連絡が来たんだぜ!!信じらんねぇ!!」
「本当かっ!?」

連中が、思わず立ち上がるほどだ―――よほど、この瞬間を待ち望んでいたようだ。
期待に満ちた様子が、ありありと顔に出ている。

「よっし…っ!!ようやく長年の恨みが晴らせる時が来たなぁ!」
「まったくだぜ!!あの野郎をぶちのめして海に沈めてやるっ!!」

拳を握り、笑みさえ浮かべながら―――男達は嬉々と語り合っていた。
その間、朝倉は忍だけを見つめながら、歩いてくる。
距離があるだけに、朝倉の足音は長く続く。
切れ長な黒の目が、忍の姿を映すまでに近づいてきた。

「―――ほら。王様の大事な愛人、すぐ傍にいるよ…?大丈夫。丁重に扱わせてもらってるから。…あ、だけど彼…すぐ噛みつくから、多少窮屈な思いさせちゃってるけど…」
「…」

「ねぇ、『キング』。忍クン、返してほしいでしょ?だって、彼は『キング』の大事な玩具だもんね」

朝倉が、ころころと笑った。

「とりあえず、おいでよ。歓迎するから。―――もちろん一人でね…」

周りにいる男達がにやりと笑った。
忍や、空、健太達はただそれを黙って見ている事しか出来ない。

「うんうん。約束破らないでね。…いいよ、それじゃ代わるね」

携帯を忍の耳元に近づけながら、朝倉はにっこり笑う。

「―――君の王様が、話したいようだから」
「…」

光が漏れる携帯のディスプレイを一瞬だけ、ちら見する。
それから忍は朝倉のなされるがまま、素直に携帯の受話口に耳を当てた。

≪―――よう≫
「…」

忍は軽く目を細めた。
それは想定内の相手からだった。


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