忍少年と隠忍自重 018

◇ ◇ ◇

昼間だと分かっていても、そこは薄暗かった。
匂いも土臭くて古く、工場跡地なのだろうか―――壊れた機械や道具に白いビニールシートが覆いかぶされた状態で放置されている。
まるで機材のゴミ捨て場みたいな場所だ。
しかしそんな事も気にならないほど、内部は広い。
冬場が近い事もあって白息が出るものの、ストーブで周りに暖を灯している。
人気さえ望まれないようなところで、二人分の気配が色濃くその場の空気を支配していた。

「あっんっんっ…!!」
「―――はっ。まだ口割わねぇか…!!」

「頑丈な女だな。もう何時間俺達相手してるんだ?」
「ざっともう4時間ってとこか?」

涙で滲んだ視界―――周りを見れば複数の気配がじっとこちらを見つめている。
それも好奇心や軽蔑、欲情を含んだ、汚らわしい視線だ。
もう止めてと、少女は叫びたかったが、それはすべてあえぎ声でかき消されてしまう。
叫んだだけでは止めてなどくれない事はすでに身を持って実感していたが、救いの光が途絶えた訳ではない。
解放される条件を知っている。
しかし知ってはいるが、教えられない―――教えたくない理由が、『彼女』にはあった。

それ故、残酷だ。

「やぁああ…っ!!あっ…ああっ!!」

そして再び、熱を帯びたそれは、体内の受け身となる部分に押し込まれるのである。
女の本能が、痛みではなく快楽を優先させ、体の負担を軽くさせようとしいるが、皮肉にもそれが彼女には辛かった。
かつて制服だったものは、破るように左右に切り裂かれ、スカートは持ち上げられて、むろん下着は全て取り除かれてしまった。
縄で拘束された両手首は、暴れすぎて皮が剥け、痛みさえすでに麻痺している。
自由な両足も、突きつけられる快楽に不自由していた。
仰向けのまま、両足を持ち上げられ、腰を痣さえ出来そうなほど強く掴まれ、露出した乳房は男たちの唾液で光って、揺さぶられる。
汚いコンクリートの床の冷たさはもう気にならない。

―――気にも留める余裕などなかった。

知らない男に、体内へ侵入され、その吐息にさえ、吐き気を促す。
しかしいくら否定しようにも、女の『口』が喜んで男を咥えるのだ。

「も…っ!やめ…っ!!」
「はっ…はっ…!!すんげぇいい顔すんなぁ、あんた…!!」

前のズボンを少し寛げ、その灼熱を纏った肉棒は未だ大きさが収まる様子はない。
避妊用のゴムはしっかりつけて対策はしてくれているようだが、今はそんなものに優しさなどと感じられる訳もない。
いつもならば柔らかいベッドで甘く言葉を囁いて、互いに楽しむものだと思っていた性行為も、今は単なる暴力でしかないのだ。
それも、彼女の口を割らせるための、そんな拷問である。

愛のないセックスに熱を上げる一人の男と一人の女。
それとは別の所から、別の男が二人の傍まで近づくと、両ひざを折って少女の顔を覗き込む。

「おね…がい…っ!!もう…っ!!」

苦しげに柳眉を寄せ、赤く熟れた唇から男を誘う歌を紡ぐ。
美人とあって、少女の艶やかな顔は、男達に性への興奮を覚えさせる。
しかしこの状況にそぐわない、おっとりと寛いだような声が少女に優しく問いかけた。

「俺たちだって鬼畜じゃないんだよ?彼の本名を教えてくれれば、それだけでいいんだ。それさえ教えてくれれば、君はすぐに開放される」

すっかり怯えきった顔をする少女は、それだけは譲れないとばかりに、頑なに唇を噛みしめて、首を左右に振る。
悲鳴を押し殺しているその姿はまるで彼女なりの反抗のようにも思え―――それが面白くなかった男は、少女を貪るその男に目で合図する。
それに喜んで同意した男は、少女の腰を掴んだまま、自分の肉棒で更に突き上げた。
途端に、少女の口から耐えきれなくなったように声が漏れる。

「―――もう一度聞くよ?『シノブ』って男の本名は?」
「ふっ!!うっ!!あっんっんっあぁあ!!…しら…!!ないぃ!!」

「嘘ばっかり」

穏やかに質問する男は、友人にでも話すように笑いかける。
その間、手が寂しかったのか―――少女の乳房に触れて、それを捏ねて弄べば、少女の体は魚が跳ねるように何度も震えた。
男達が押し殺したように笑う声が、四方八方から少女を責める。

―――この淫乱と、少女を追い詰めていく。

それに涙しながら、少女は決して口を開かなかった。
しかし、それももう限界だった。
例え卑下されてしまおうと、汚されてしまっても、決して言うものかと構えてきたが、もう3日目もこんな性的暴力を繰り返させられれば、精神も崩れる。
一番の屈辱は、男たちの目の前で、排泄をさせられた時だ。
それ以来2日間、少女は食べ物や飲み物を口にしていない。
含んだのは、全て男達の汚らしい性液だけだ。

言えば楽になる。

言えば解放される。

一体何のために自分が耐えているのかとさえ、自問した。

彼女という柱は既に破壊寸前だった。

少女の乳房を虐める事に飽きたのか、その男はため息を零す。
少女の茶色の長い髪。
前髪を乱暴に掴んで、強引に少女と目を合わせる。

「いた…いっ!!」
「ねぇ、もうそろそろ言ってくれないとさ。申し訳ないけど、もっとひどいことしちゃうよ?」

幼いようなたどたどしい言葉で。
だが、その言葉の裏には、いつまでも言わない事に苛立っていると分かる。
男の黒に塗りつぶされた鋭い瞳―――狂いさえ正気だと言いそうな眼が三日月のように細まっていた。

喰われる―――と、少女は快楽を忘れ、恐怖に身を震わせた、その時だ。

「空…先輩…!!」


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