忍少年と碧血丹心 065

逃げようと足掻けば、それを叩き潰される繰り返し。
首を掴み、お前では俺に適わないと―――そう嘲笑うかのような圧倒的な力を持って愛撫する。
腹近くまで、纏っていた衣が肌蹴て、よりいっそ華奢さを思わせる細いラインを描く背中には、既に何十もの跡が薩摩によって花開いていた。
うつ伏せの格好は逃げる体勢のまま―――忍は抵抗する余裕さえも奪われ、ただ握りこぶしを両手で作って歯を食いしばり、畳に額を押し付けて耐えるのみ。
こんな屈辱を味わうぐらいならば、いっそのこと快楽ではなく激痛の方がよっぽどダメージはなかった。
背中から覆いかぶさるようにして圧し掛かってくる薩摩の体重を支えるのももはや限界だ。
腰が砕けて崩れそうになるのを四肢でどうにか踏ん張って耐え忍ぶが、足など既に笑ってしまっている。
抵抗できないのを良い事に、薩摩は背中に己の痕跡を残しながらも何の膨らみも持たない胸元を弄り、突起を見つけてはそれを指先で弾いて、魚のように飛び跳ねる忍の反応を楽しんでいた。
与えるダメージの中で、最も屈辱的であろう快楽を、忍の細胞の一つ一つに教えていくのである。
それも時間をかけてじっくりと、熟した女ならば既に腰を揺らして醜態を晒してしまうほどの焦らしさえ交えて、忍の体を虐めていた。
腫れ上がるほど赤く熟し、熟れた突起を痛いほど抓られて、忍は咄嗟に唇を噛み締める。

震えている唇からは既に血が滲み出ていた。

「は…っ…っ!!ぐぅう…っぁ…っ!!」
「―――あれだけ煽っておきながら色気の無ぇ声出すんじゃねぇよ。啼くならもっと俺を誘うように啼け」

まるでこちらが悪いみたいな物言いに、忍の内心はこれ以上にないぐらい粗荒んでいた。
忍には、人で弄ぶ事を遊戯の様に楽しむ彼が本気で自分を抱こうと考えているとは思っていなかった。
こんな肉の少ない子供など抱いて、常に柔らかな女を喘がせる薩摩からしてみればなんとも味気無いに違いない。
誰だってスーパーの安売りにされている肉よりも、高級ステーキの方が喜ぶに決まっている。
たとえ相手が極道の鬼神とは言え、肝の据わった者から見ればこれほど魅力的な男はいまい。
全権と力を握ったこの男の顔は圧巻するような貫禄にさえ怯まなければ、甘く吐息が漏れそうなほど良い男なのである。

それに極道者ともなれば常に危険と隣り合わせ。
他の男では味わえないスリルが、女達を虜にするのだ。
しかも女には優しく、砂糖漬けのように甘く溶かす紳士的な一面があるのも事実だった。
男がいけるかどうかは知らないが、一度薩摩が歩けば人は容易に集まってくる。

―――ああ、これはまるで『アイツ』では無いか…。

考えたくも思い出したくも無い顔を想像してしまい、忍はそれを振り払う。
『味見』だと彼も言っていたし、きっとこの行為に飽きたら、まるで塵でも捨てるように放り捨ててくれるだろう事を望んで、それを想定して好きにさせていた。
抵抗すればするほど相手が燃えてしまうというのならば、ここは不本意ではあるものの、大人しく好きにさせておくのが無難なのかもしれない。

だからこそ恨み言一つ言わずに忍は辛抱しているのだ。

しかし、そんな忍のらしくない大人しさに気づかない薩摩でも無く、ましてや忍の手の内を彼が知らない訳もなかった。

「―――啼かねぇなぁ…。啼かねぇなら啼かせるまでこのまま虐めてやろうか…?満更痛いだけじゃねぇんだろうよ。そうやって声抑えられてっと、こちとらどう啼かせてやろうかって楽しくなっちまうじゃねぇか。―――ん?お前の『ココ』はどうなってる…?」
「っ!?触んなっ!!」

胸元を弄っていた片手がゆっくりと下へ落ち、今だ解かれていない袴の中に―――それも急所を鷲掴みにしてきた。
ぎょっと忍が眼を見開き、大人しかった体を我武者羅に暴れさせた忍の血相を代えた様子に、薩摩はいい反応だとばかりに笑みを深くする。

「なんだ。不能なのかと思いきや、一端に反応してんじゃねぇか。しかし、ちっさくて笑いたくなるぜ。お前の生意気なでかい態度とは違って、随分『ココ』は奥ゆかしいじゃねぇか」
「っ!!」

今まで一番の烈火が忍の顔を赤くさせた。

こんな屈辱、今まであっただろうか!!

わなわなと震えだした忍が怒りに顔を歪ませているのも見ないまま、薩摩は忍を追い詰めるように袴の上から『ぶつ』を扱き始めれれば、怒りに煮や立たせている場合ではないと、忍とて切り替えは出来る。

「触んなと言うとるっ!!」

体を捩じり、急性な愛撫を―――それも口から何かが出てきてしまいそうな快楽に躓きながら、精一杯の拒絶を薩摩に見せた。
片肘で薩摩の顔面を押しのけながら、忍は自分の身を守るように体を縮める。

「もう足立たせんのも限界だろうに。大した見栄だ」

人が必死だというのに、やはり真後ろの男は余裕に笑みを浮かべるだけだ。
今だ結び目が解かれていない忍の漆黒に濡れた髪が、既にべっとりとしている背の肌に吸い付いているのを、薩摩が邪険そうにそれを押し払う。
暴れ馬でも宥めるように背中へ口付けの雨が降り注ぎ、同時に陰部への快楽という名の拷問が始まった。

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